※本記事は2026年1月10日に最新情報へ更新しています。

マンションやビルのオーナー様、管理組合の理事様にとって、大規模修繕工事は非常に大きなイベントです。
その中で必ずと言っていいほど耳にする「打診調査(だしんちょうさ)」という言葉。
見積書に記載されているものの、「壁を叩くだけで何が分かるの?」「今のままでも綺麗に見えるのに、本当に費用をかける必要があるの?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、打診調査は建物の「健康診断」であり、所有者の「法的責任」を守るための最重要工程です。
これをおろそかにすると、タイル落下事故による人身被害や、修繕後の再剥離といった深刻なトラブルに直結します。
この記事では、元となる情報を大幅に拡充し、専門的な知識がない方でも「なぜ打診調査が必要なのか」「どうやって行われるのか」「費用の適正ラインはどこか」を深く理解できるよう、徹底的に解説します。
目次
打診調査とは、一言で言えば「音の響きを利用して、目に見えない壁の内部異常を探し出す技術」です。
人間の耳と指先の感覚を研ぎ澄ませて行うこの調査は、ハイテク機器が進化した現代においても、最も信頼性の高い調査方法として建築現場で採用され続けています。
建物の外壁(タイルやモルタル)は、コンクリートの躯体(くたい)の上に接着剤やモルタルで貼り付けられています。
新築時はガッチリと密着していますが、経年劣化によって接着力が弱まると、コンクリートと仕上げ材の間にわずかな「隙間(空気層)」が生まれます。
これが「浮き」と呼ばれる状態です。
打診調査では、テストハンマー(パールハンマー)や打診棒といった専用の道具で壁面を転がしたり軽く叩いたりします。
この時の「音の反響」を聞き分けることで、壁を壊さずに内部の状態を判定します。
イメージしてください
スイカを買う時、ポンポンと叩いて中身が詰まっているか確認しますよね? あるいは、壁の裏にある柱を探すためにコンコンと叩いた経験はありませんか? 原理はあれと全く同じです。
熟練の調査員は、わずかな音の高低や響き方の違いを聞き分けます。

この音の違いは、素人が聞いても明らかに分かる場合もあれば、微細な違いしか出ない場合もあります。
また、壁の厚みや材質によっても「健全な音」の基準が変わるため、調査員の経験と技術が非常に重要になります。
「ドローンで撮影すれば分かるのでは?」「双眼鏡で見れば十分では?」と思われるかもしれません。
しかし、目視調査と打診調査は、その目的と分かることが全く異なります。
「見た目はピカピカのタイルが、ある日突然剥がれ落ちた」という事故の多くは、目視では発見できなかった内部の「浮き」が原因です。
だからこそ、物理的に叩いて確認する打診調査が不可欠なのです。
大規模修繕工事の主な目的は、建物の寿命を延ばすことと、居住者や第三者の安全を守ることです。
打診調査はこの目的を達成するための「診断」にあたります。
病院で手術をする前に、レントゲンや検査を行わずにいきなりメスを入れる医者がいないのと同じ理屈です。
なぜ、硬いコンクリートに貼られたタイルが浮いてしまうのでしょうか。
主な原因は、自然環境による過酷なストレスです。
特に築10年以上経過した建物では、これらの要因が複合的に作用しており、「どこかが浮いているのが当たり前」と考えるべきです。
外壁の浮きを放置することは、爆弾を抱えているようなものです。
実際の修繕現場では、打診調査が不十分だったために起こるトラブルが後を絶ちません。
これらを防ぐ唯一の方法が、「足場を組んだ後に、全数打診調査を行うこと」なのです。
打診調査は万能ではありませんが、外壁修繕においては最も確実なデータを提供してくれます。
何が分かり、何が分からないのかを明確にしておきましょう。
調査員が壁を叩くことで、以下の症状を特定し、チョークやテープでマーキングしていきます。
これらの情報は、「どこに」「どの工法で」「何箇所」補修が必要かを決定する直接的な根拠となります。
一方で、音だけでは判断が難しい領域もあります。
近年増えている「赤外線サーモグラフィ調査」と「打診調査」。
どちらが良いのでしょうか?
結論は「適材適所」です。
大規模修繕工事の本番(施工時)では、確実性を重視して「打診調査」を行うのが鉄則です。
一方、工事をするかどうか検討する段階や、法的な定期報告(特殊建築物定期調査)では、コストを抑えられる「赤外線調査」が有効です。
では、実際に現場ではどのように調査が行われているのでしょうか。
職人たちがどのような手順で建物を診断しているのか、その裏側を解説します。
調査員は「七つ道具」とも呼べる腰袋を提げて足場に上がります。
打診調査は、足場が組み上がった直後、補修工事が始まる前に行われる最初の工程です。
【STEP 1】足場上での全数調査
職人が足場に上がり、壁の隅から隅まで、文字通り「全て」の範囲を叩いて回ります。
「お、ここは音が軽いな」と気づいたら、その周辺を重点的に叩きます。
どこからどこまでが浮いているのか、その境界線を厳密に探ります。
10階建てのマンションであれば、そのすべての壁面が調査対象です。

【STEP 2】マーキング(可視化)
浮いている範囲が特定できたら、その周囲をテープやマーカーで囲みます。
このように色分けをすることで、後から来る補修職人が一目で作業内容を把握できるようにします。

【STEP 3】図面への落とし込みと集計
現場でマーキングした内容を、立面図(建物の図面)に書き写します。
「東面の3階部分に、0.5平米の浮きが3箇所」といった具合に集計し、最終的な補修数量を確定させます。

調査が終わると、管理組合やオーナー様へ報告書が提出されます。
これには以下のような資料が含まれます。
この報告書こそが、「工事費用の最終決定」の根拠となります。
見積もり時の概算数量と、実数との差(増減)をここで調整(実数精算)することになります。
「打診調査はいつやればいいの?」という疑問に対し、最も重要な「2つのタイミング」について解説します。
ここを混同すると予算オーバーの原因になります。
まだ工事業者を決める前、あるいは工事予算を組む段階で行う調査です。
この段階では足場がないため、以下の方法が取られます。
注意点:
これはあくまで「傾向」を見るための調査です。
「全体の5%程度が傷んでいるだろう」という推測(概算)でしかありません。
したがって、この段階の見積もり数量は確定値ではないことを理解しておく必要があります。
工事契約が済み、足場を組み上げた直後に行う、今回の記事のメインテーマである調査です。
壁の目の前まで行けるため、100%正確な数量が出ます。
重要な流れ:
大規模修繕工事とは別に、建築基準法第12条により、一定規模以上の特殊建築物(マンションやビルなど)は、定期的な調査報告が義務付けられています。
これらのタイミングでは、「全面打診調査(または赤外線調査)」を行い、特定行政庁へ報告しなければなりません。
これを怠ると罰則の対象となるだけでなく、事故が起きた際の責任が極めて重くなります。

打診調査で「浮き」が見つかった場合、どのような治療(補修)が行われるのでしょうか。
代表的な工法を簡単に紹介します。
| 工法名 | どのような時に選ぶか | 作業内容 |
|---|---|---|
| アンカーピンニング工法 (エポキシ樹脂注入) |
タイルは割れていないが、 裏側が浮いている場合。 |
タイルの目地(隙間)に小さな穴を開け、接着剤(エポキシ樹脂)を注入し、ステンレスピンを挿入して壁に固定し直す方法。表面の見た目をあまり変えずに補強できる。 |
| タイル張り替え工法 | タイルが割れている、欠けている、 あるいは浮きが激しすぎる場合。 |
浮いているタイルをハツリ取って撤去し、新しいタイルを貼り直す。※既存タイルと同じものが廃盤になっている場合、似たタイルを探すか特注する必要がある。 |

※外壁タイルの補修方法を詳しく知りたい方は、
こちらの記事も参考にしてください。
モルタル壁(塗装仕上げ)の場合は、浮いている部分に穴を開けて樹脂を注入する「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法」が一般的です。
また、ひび割れ(クラック)に対しては、ひび割れ部分をU字型に削ってシーリング材を充填する「Uカットシーリング工法」などが行われます。
| アンカーピンニング 注入工法 |
【タイルは割れていないが浮いている場合】
タイルの目地に小さな穴を開け、接着剤(樹脂)を注入し、ステンレスピンで壁に固定し直す方法。
※見た目をほとんど変えずに補強できます。 |
| タイル張り替え工法 | 【タイルが割れている・激しく浮いている場合】
悪い部分を剥がして撤去し、新しいタイルを貼り直す方法。
※廃盤タイルの場合は近似色を使用します。 |
| Uカット シーリング工法 |
【ひび割れ(クラック)がある場合】
ひび割れ部分を機械でU字型に削り取り、シーリング材(ゴム状のパテ)を充填して埋める方法。
|
※外壁ひび割れの補修方法を詳しく知りたい方は、
こちらの記事も参考にしてください。
打診調査の結果、「浮き」が壁全体の何割を占めるかによって、方針が変わることがあります。
オーナー様にとって最も気になる費用の話です。
打診調査の費用は決して安くはありませんが、必要経費として捉えるべき理由があります。
打診調査の費用は、主に「調査する壁面積(平米数)」と「アクセス方法」によって決まります。
※これらはあくまで目安であり、建物の形状や立地条件により変動します。
大規模修繕の見積書を受け取ったら、以下の項目を必ずチェックしてください。
最後に、失敗しないために知っておくべき注意点をお伝えします。
「外壁調査」と一口に言っても、業者によって認識が違うことがあります。
A社は「手の届く範囲だけ」、B社は「全面調査」で見積もっているかもしれません。
金額だけで比較せず、「どの範囲を、どのような方法で調査するのか」を確認してください。特に「全面打診」か「抜き取り(一部)調査」かの違いは大きいです。
打診調査は人の感覚に頼る部分が大きいため、調査員によって判断が割れることがあります。
信頼できるのは、「なぜここをNGとしたのか」を現地で実際に音を聞かせて説明してくれる業者です。
不明点があれば、遠慮なく「私にも音を聞かせてください」と頼んでみましょう。
打診調査の結果(劣化図)が出てきたら、必ず目を通してください。
「専門的なことは分からないから任せる」のではなく、「南側の壁に浮きが集中しているな」「想定より劣化が進んでいるな」といった事実を共有することが重要です。
これが、修繕積立金の使い道に対する納得感や、次回の修繕計画の見直しに役立ちます。
打診調査について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
打診調査は、単に壁を叩いているだけの作業ではありません。
建物の「隠れた病巣」を見つけ出し、適切な治療を行うための、絶対に欠かせない診断プロセスです。
大規模修繕工事を成功させるためには、この「音による診断」の価値を正しく理解し、適切な調査を行うことが第一歩です。
「費用がかかるから調査は適当でいい」とは考えず、「安心を買うための必要経費」として、しっかりとした調査を実施することをお勧めします。
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