※本記事は2026年1月8日に最新情報へ更新しています。

「外壁にひびが入っているけれど、これってすぐに直さないといけないの?」
「小さなひび割れだから、まだ様子を見ても大丈夫だろう」
ふと自宅の外壁を見上げたとき、ひび割れ(クラック)を見つけて不安になったことはありませんか?
実は、外壁のひび割れは建物が発している「SOSのサイン」です。
「たかがひび割れ」と放置してしまうと、雨水が建物内部に侵入し、構造体の腐食、シロアリの発生、断熱材のカビなど、目に見えない場所で深刻な劣化が進行します。
その結果、気づいたときには手遅れになり、本来なら数万円で済んだ補修が数百万円規模の大規模修繕になってしまうケースも決して少なくありません。
この記事では、外壁塗装・修繕のプロフェッショナルな視点から、ひび割れに関する疑問をすべて解決します。
この記事を読み終える頃には、「今すぐ工事が必要なのか」「まだ様子を見ていいのか」をご自身で正しく判断できるようになります。
大切な建物を守るために、ぜひ最後までお読みください。
目次
外壁のひび割れは、単なる「古くなったから」という経年劣化だけで片付けられるものではありません。
実際の現場では、物理的な要因や環境的な要因が複雑に絡み合って発生しています。
重要なのは、「原因を理解せずに表面だけを埋めても、必ず同じ場所に再発する」という点です。
補修を行う前に、まずは「なぜ割れたのか」を知ることが、長持ちするメンテナンスの第一歩です。
モルタルやコンクリート外壁で最も多い原因です。
これらの材料は、水とセメントと砂を混ぜて作られます。
施工時には水分を含んでいますが、時間が経ち硬化して水分が蒸発する過程で、体積がわずかに収縮(縮む)します。
このとき、壁全体がギュッと縮もうとする力が発生し、その引張力に耐え切れなくなった部分に亀裂が入ります。
「ピキッ」と表面が割れる現象です。
特に新築から1〜3年以内に発生しやすい傾向があります。
建物は常に動いています。
建物が揺れた際、硬い外壁材がその動きについていけず(追従できず)、力が集中する部分にひび割れが生じます。
特に、窓やドアなどの開口部の四隅は、建物の歪みの力が最もかかりやすい場所であり、斜めにひびが入るのが特徴です。
これを「開口部クラック」と呼び、構造的な問題が関わっているケースが多くなります。
すべての物質は、熱くなると膨張し、冷えると収縮します。
外壁は過酷な環境に晒されています。
夏場の直射日光で表面温度は60℃以上になり、冬の夜には氷点下になります。
この「昼は膨張し、夜は収縮する」という繰り返しにより、素材が疲労してクラックが発生します。
これを「熱クラック」と呼びます。
特に、サイディングボードの継ぎ目(シーリング)が切れる原因の多くは、このボード自体の伸縮によるものです。
寒冷地や湿気の多い地域で起こる現象ですが、関東以南でも条件によっては発生します。
外壁の微細な隙間に入り込んだ雨水や湿気が、夜間の冷え込みで凍結して膨張します(水は氷になると体積が約1.1倍になります)。
この膨張圧は凄まじく、外壁を内側から破壊し、ひび割れだけでなく表面の剥がれ(ポップアウト現象)を引き起こします。
一度凍害が始まると、そこからさらに水が入り、急速に劣化が進むため注意が必要です。
ひび割れといっても、緊急性のないものから、今すぐ対処が必要なものまで様々です。
プロは見た目だけでなく、「幅・深さ・発生場所」の3点を総合的に見て危険度を判定します。
まずは、ご自宅のひび割れが「ヘアクラック」なのか「構造クラック」なのか、下の画像で比較してみてください。
これが最初の判断基準になります。

図解:名刺やテレホンカードが入るかどうかが大きな判断基準となります。
続いて、以下の表を参考に、ご自宅のひび割れがどの危険度レベルか確認してください。
| 危険度 | 名称 | 特徴・目安 | 緊急性 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | ヘアクラック | 幅0.3mm未満。
髪の毛ほどの細さ。 深さは表面塗膜のみの場合が多い。 |
低
経過観察 |
| レベル2 | 乾燥クラック | モルタルの水分蒸発によるもの。
幅は狭いが、数が広範囲に多い。 |
中
塗替え時期のサイン |
| レベル3 | 縁切れクラック | 目地の継ぎ目(コーキング)の劣化。
ゴムが痩せて隙間ができている。 |
中〜高
早めの打ち替えが必要 |
| レベル4 | 構造クラック | 幅0.3mm以上、深さが5mm以上。
建物の歪みが原因。 貫通している可能性が高い。 |
高(危険)
早急な補修が必要 |
一般的に「0.3mm未満なら様子見で良い」と言われますが、これには誤解があります。
プロの見解:
「今すぐ家が倒れるわけではないが、防水切れの初期サインであることは間違いない」
ヘアクラックは、主に表面の塗装膜(塗膜)が経年劣化で硬くなり、弾力性を失って割れている状態です。
この段階では構造体(柱やコンクリート内部)まで水は届いていないことが多いですが、外壁の防水機能は低下しています。
放置すれば傷口は確実に広がり、次の「構造クラック」へと進化します。
【セルフチェックの方法】
名刺がスッと入るような幅(0.3mm以上)のひび割れは、「構造クラック(貫通クラック)」と呼ばれます。
これは、表面だけでなく外壁材を貫通して裏側の防水シートや構造体にまで達している可能性が極めて高い状態です。
構造クラックを放置すると、内部でどのような恐ろしい事態が進行するのか、以下の図解をご覧ください。

図解:雨水が鉄筋を錆びさせ、コンクリートを破壊する「負の連鎖」
【負の連鎖メカニズム】
特に、ひび割れの周辺に「錆汁(茶色のシミ)」や「エフロレッセンス(白い粉)」が出ている場合は、すでに内部で水が回り、成分が溶け出している証拠です。
一刻も早い処置が必要です。
ここからは、実際の現場写真を使って具体的な補修手順を見ていきましょう。
プロの仕事は、単にコーキングで穴を埋めるだけではありません。
ひび割れの状況に合わせて、最適な材料と工法を使い分けます。
「ヘアクラック」と呼ばれる軽微なひび割れに対して行う工法です。
塗装前の下地調整として行われることが一般的です。

【解説】
使用するのは、微弾性フィラーやカチオンフィラーと呼ばれる下地調整材です。
この材料は、セメントと樹脂を混ぜたようなもので、「細かい隙間に入り込む浸透力」と「乾燥後の適度な柔軟性」を併せ持っています。
写真のように、硬い刷毛(ハケ)を使ってひび割れに対して擦り込むように塗布します。
単に表面をなぞるだけでは、内部まで材料が入りません。
「埋める」というより「押し込む」イメージで作業することで、塗装後のひび割れ再発を防ぎます。
幅が広いひび割れ(構造クラック)に対しては、フィラー刷り込みでは不十分です。
あえて「溝を掘って傷口を広げる」この工法が、建築業界で最も信頼されている標準的な補修方法です。
まず、ディスクサンダーという電動工具を使い、ひび割れに沿って壁をカットしていきます。

カットした後は、このようなU字(またはV字)の溝になります。
一見すると「壁を壊している」ように見えるかもしれませんが、これが重要な下準備です。

溝の中を清掃し、プライマー(接着剤)を塗布した後、シーリング材をたっぷりと充填します。

【解説】
なぜカットするのか?
そのままシーリングを塗っても、ひび割れが狭すぎて奥まで材料が届かないからです。
溝を広げることで、十分な量のシーリング材を充填でき、接着面積も確保できます。
この厚みのあるシーリング材が「ゴム状の緩衝材(クッション)」となり、建物が再び動いた際に衝撃を吸収してくれるのです。
充填したシーリング材をヘラで均一にならして完了です。

【その後の工程:模様合わせ】
補修直後は、補修跡がツルッとしていて目立ちます(いわゆるミミズ腫れのような状態)。
美観を損なわないよう、塗装前に既存の外壁と同じ模様(パターン)を吹き付けたりローラーで作成し、その上から全体を塗装して仕上げます。
ここまでやって初めて「プロの補修」と言えます。

図解まとめ:溝を広げることで「接着面積」と「材料の厚み」を確保し、再発を防ぎます。
外壁塗装において最も重要なのは、上塗りの塗料選びではなく、見えなくなる「下地補修」の精度です。
そして、ここで多くの手抜き工事(あるいは知識不足による施工不良)が発生しています。
その代表例が「乾燥不足」です。
補修材(シーリングやモルタル)には、メーカーが定めた適切な乾燥期間(オープンタイム・養生期間)があります。
工期を短縮したいからといって、補修した当日にすぐ塗装をしてしまうと、以下のような致命的なトラブルが発生します。
優良業者の鉄則:
「補修 → 十分な乾燥(1日〜数日) → 確認 → 塗装」
下地補修と塗装の間には、必ず乾燥期間が必要です。
見積もりを取る際は、「補修してから塗装まで、どれくらい乾燥時間を置きますか?」と質問してみるのも、業者の質を見極める良い方法です。
「今はまだ大丈夫」と思って放置した場合、建物内部では静かに、しかし確実に崩壊が進んでいきます。
ここでは、放置期間ごとの劣化シミュレーションをご紹介します。
ひび割れから雨水が壁の内側へ侵入します。
この段階では室内に雨漏りは発生しません。
水は壁の中の防水シートを伝って下に落ちるか、断熱材(グラスウール等)に吸い込まれます。
断熱材は水を吸うとペシャンコに潰れ、断熱性能を失います。
「最近、冷暖房の効きが悪い」「部屋がかび臭い」と感じたら、壁の中でカビが大繁殖している可能性があります。
カビの胞子は健康被害(アレルギーや喘息)の原因にもなります。
湿気を帯びた木材は、腐朽菌(木を腐らせる菌)の温床です。
さらに恐ろしいのがシロアリです。
シロアリは湿った木材が大好物です。
床下からだけでなく、外壁のひび割れから侵入した雨水を頼りに、壁の中の柱や土台を食い荒らします。
ここまで進行すると、外壁塗装だけでは直りません。
外壁を剥がして柱を入れ替える、シロアリ駆除を行うなど、数百万円規模の改修工事が必要になります。
ついに室内クロスに雨染みが現れます。
しかし、室内に水が出てきた頃には、壁の中はすでにボロボロです。
鉄骨造やRC造の場合、第1章で解説した「爆裂」が起こり、コンクリート片が落下して通行人に当たる事故のリスクも生じます。
建物の資産価値は激減し、売却しようとしても「瑕疵(欠陥)あり」として価格が大幅に下がってしまいます。
結論:
初期のひび割れ補修なら数万円〜十数万円で済みます。
「早期発見・早期治療」が、トータルコストを最も安く抑える唯一の方法です。
ホームセンターには「外壁補修キット」が売られていますが、DIYには大きなリスクが伴います。
安易な自己判断は、かえって状況を悪化させることがあります。
もしDIYをするとしても、これだけは絶対に避けてください。
「お風呂場やキッチン用のシリコンシーリング(シリコーン系)」を使うことです。
将来的にプロに塗装を依頼した際、DIYで塗ったシリコンを全て撤去する「シリコン撤去作業費」や「逆プライマー処理費」が追加でかかり、かえって高くついてしまいます。
外壁には必ず「変成シリコン」か「ウレタン(ノンブリードタイプ)」を使用してください。
判断に迷ったときは、以下のチャートに従って行動を決めてください。
安全面と品質面から、少しでも不安がある場合はプロへの相談を推奨します。
Q1. ひび割れの幅は「名刺(約0.3mm)」が入りますか?
Q2. ひび割れの場所は「手の届く高さ」ですか?
Q3. 同じ場所に「何度も再発」していますか?
※ DIYはあくまで応急処置です。不安な場合は無料点検を活用しましょう。
⚠️ ひとつでも当てはまったら要注意
最後に、気になる費用感と業者選びのポイントを解説します。
※ ひび割れが全体に及んでいる場合や高所作業が必要な場合は、補修だけでなく「全体塗装」を行った方が、足場代の無駄がなく経済的です。一般的に築10年を超えている場合は、塗装の時期と重なるためセットで行うのが基本です。
外壁診断や見積もりを依頼した際、以下の質問をしてみてください。
その回答で業者の質が分かります。
A. はい、補修のみの依頼も可能です。
ただし、足場が必要な高所作業になる場合、補修費(数万円)に対して足場代(15〜20万円)がかかるため、割高になります。
そのため、築10年以上経過しているなら、足場を有効活用するために全体塗装とセットで行うのが最もコストパフォーマンスが良い方法です。
A. 補修のみの場合、多少目立ちます。
補修材と既存の外壁では色や質感が異なるため、「ミミズ腫れ」のような跡が残ることがあります。
美観を回復させたい場合は、補修後に「パターン合わせ(既存の壁の模様を再現する作業)」を行い、その上から壁一面を塗装する必要があります。
A. 必ずしもミスとは限りません。
モルタル外壁の場合、乾燥収縮により新築後1〜2年でヘアクラックが入ることは物理的に避けられない現象であり、珍しくありません。
ただし、幅が広い(0.5mm以上)場合や、基礎部分にまでひびが入っている場合は、地盤沈下や構造的な欠陥の可能性があります。
速やかに施工会社(建築会社、ハウスメーカー)のアフターサービスに連絡し、点検を受けてください。
保証期間内であれば無償補修の対象になる可能性があります。
外壁のひび割れについて徹底解説してきました。
要点を整理します。
ひび割れは、人間で言えば「虫歯」のようなものです。
自然治癒することは絶対にありません。
放置すればするほど痛み(劣化)は増し、治療費(修繕費)も高くなります。
もし、建物の外壁に気になるひび割れを見つけたら、まずは写真を撮り、名刺などを当てて幅を測ってみてください。
そして判断に迷ったときは、自己判断せずに専門家の無料診断を受けることが、大切な建物を守る最も確実な方法です。
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