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2016年 07月 14日

大規模修繕工事の費用相場はいくら?戸数別目安と失敗しない判断基準

※本記事は2026年2月4日に最新情報へ更新しています。

 

大規模修繕工事の費用相場はいくら?戸数別目安と失敗しない判断基準

 

大規模修繕工事を検討し始めたとき、多くの管理組合・マンションオーナー様がまず気になるのが「結局、いくらかかるのか?」「この見積は高いのか、妥当なのか?」という点ではないでしょうか。

インターネットで調べると、「1戸あたり〇〇万円」「〇〇戸で〇〇万円」などの情報は出てきますが、実際には同じ戸数でも数千万円単位で費用が変わるケースは珍しくありません。

その違いを理解しないまま判断してしまうと、「安さ重視で失敗した」「後から追加費用が発生した」といった後悔につながることもあります。

 

本記事では、大規模修繕工事の費用相場を単なる数字で終わらせず、なぜ金額に差が出るのか、どこを見て判断すべきなのかを、モデル見積・具体例・実務視点を交えて分かりやすく解説します。

なお本記事は、創業38年以上、大規模修繕工事を専門に手がけてきた施工会社の実務経験をもとに、現場で実際に起きやすい判断ミスや費用トラブルも踏まえて構成しています。

この記事はこんな方におすすめ

  • ✅ 「相場を知りたい方」
  • ✅ 「見積金額が妥当か判断したい方」
  • ✅ 「費用で失敗したくない方」

こうした方にとって、判断の軸がはっきりする内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

目次 [クリックで開閉]
  • 1. 結論|大規模修繕工事の費用相場は「戸あたり100万〜250万円」が目安
    • 公的データから見る「大規模修繕工事の費用相場」
    • 「100万〜250万円/戸」と幅が出る理由
    • よくある誤解|「平均額=自分たちの適正価格」ではない
    • ここで押さえるべき結論
  • 2. まずは30秒試算|あなたのマンションは総額いくら?
    • いきなり結論|最初は「戸数×相場レンジ」で考えてOK
    • 計算方法はこれだけ|「戸数 × 100万〜250万」
    • 戸数別|ざっくり総額イメージ(最初に見るべき目安)
    • 多くのマンションが入りやすい「中心帯」とは?
    • 逆に「高めゾーン」に入りやすいのはこんなケース
    • よくある失敗|「低めの数字」だけを信じてしまう
    • 見出し2のまとめ|この時点で持つべき費用感
  • 3. 早見表|30戸・50戸・80戸〜の費用目安
    • この章の役割|「相場」を“感覚”ではなく“数字の幅”で理解する
    • 30戸前後のマンション|最も相談が多い標準規模
    • 50戸前後のマンション|金額差が“判断ミス”につながりやすい規模
    • 80戸以上のマンション|総額1億円超が“普通”になる世界
    • なぜ早見表は「目安」でしかないのか
    • ここで掴むべき感覚
  • 4. 費用が決まる“スイッチ”|高くなる/抑えやすい条件をチェックリストで整理
    • この章が重要な理由|「金額の差」には必ず理由がある
    • 【チェック1】下地補修量が多いと、一気に費用が上がる
    • 【チェック2】防水工事の範囲と工法で金額は大きく変わる
    • 【チェック3】建物形状・足場条件が悪いとコストは跳ね上がる
    • 【チェック4】工事範囲をどこまで含めるかで“別物の金額”になる
    • 【チェック5】近隣環境・施工制限が多いと見えないコストが増える
    • ここが分かれ道|「高い見積=悪」ではない
    • ここで持つべき判断軸
  • 5. 内訳が分かれば相見積もりに勝てる|費用の中身(工種別)と比率の考え方
    • なぜ「総額」だけを比べてはいけないのか
    • 大規模修繕工事の主な内訳項目(工種別)
    • 比率で見ると見えてくる「妥当性」
    • 要注意①|「一式」表記が多すぎる見積書
    • 要注意②|下地補修・防水が極端に安い場合
    • 「良い見積書」の共通点とは
    • 相見積もりで見るべき“本当のポイント”
  • 6. 3モデル見積|同じ30戸でもここまで変わる
    • この章の目的|「相場の幅」を“自分の物件像”に変換する
    • モデル①|軽めモデル(築10〜12年・劣化が軽微なケース)
    • モデル②|標準モデル(築15年前後・最も多いパターン)
    • モデル③|重めモデル(築20年以上・劣化が進行したケース)
    • 3モデルを比べて見える「費用差の正体」
    • 自分のマンションはどのモデルに近いか?
  • 7. 見積書の読み方|金額の大小より「削ってはいけない所」を見抜く
    • この章の結論|大規模修繕は「削った瞬間に失敗が決まる項目」がある
    • 削ってはいけない①|下地補修(ここを削ると数年後に再劣化)
    • 削ってはいけない②|防水工事の仕様・工法(保証と耐久性に直結)
    • 削ってはいけない③|現場管理・品質管理・安全対策
    • 削ってはいけない④|共通仮設・養生(クレームと事故を防ぐ)
    • 「安い見積」が危険な理由|削られる順番は決まっている
    • 良い見積書の共通点|ここをチェックすれば失敗しない
    • 判断基準を「価格」から「中身」へ
  • 8. 費用を抑える方法|削るのではなく「最適化」で総額を下げる
    • この章の結論|大規模修繕は“削減”より“整理”で安くなる
    • 最適化①|建物診断で「やる工事/やらない工事」を仕分ける
    • 最適化②|工事仕様を統一して“比較できる相見積もり”にする
    • 最適化③|工事範囲の「分割」は慎重に判断する
    • 最適化④|発注方式の違いでコスト構造を理解する
    • 最適化⑤|「安く見える提案」に飛びつかない
    • “賢く抑える”ための判断軸
  • 9. 長期修繕計画・修繕積立金とのつなぎ|「いくら必要か」を資金計画で固める
    • この章の結論|工事費の正解は「金額」ではなく「計画との整合」
    • 長期修繕計画は「見積のため」にも必要な資料
    • 国のガイドラインが示す「考え方の基準」
    • 修繕積立金が足りない場合の現実的な選択肢
    • やってはいけない判断|積立金に合わせて工事内容を削る
    • 資金計画を“前向きな判断材料”に変えるコツ
    • 資金計画が整うと判断はブレなくなる
  • 10. 施工事例|同規模でも費用が変わった理由を具体的に解説
    • この章の役割|「相場」を“現実の判断材料”に変える
    • 事例①|30戸・標準的な1回目修繕|中心帯に収まったケース
    • 事例②|50戸・劣化が進んだ1回目修繕|高めゾーンに入ったケース
    • 事例③|80戸超・2回目修繕|最適化で上振れを抑えたケース
    • 3つの事例から分かる「本質」
    • 事例は“価格比較”ではなく“判断の材料”
  • 11. よくある質問(Q&A)|大規模修繕工事の費用でよくある疑問
  • 12. まとめ

 

 

1. 結論|大規模修繕工事の費用相場は「戸あたり100万〜250万円」が目安

 

マンションの大規模修繕工事を検討し始めた管理組合・オーナー様の多くが、最初につまずくのが「結局、いくら掛かるのか分からない」という点です。

インターネットで調べると、「1戸あたり100万円」「総額3,000万円〜4,000万円」といった数字が並びますが、なぜその金額になるのか、そして自分たちのマンションはどの範囲に入るのかまでは、なかなか分かりません。

 

結論からお伝えすると、大規模修繕工事の費用相場は1戸あたり「おおよそ100万〜250万円」がひとつの目安になります。

ただし重要なのは、相場は“1つの数字”ではなく、明確な「幅(レンジ)」があるという点です。

この幅が生まれる理由を理解せずに見積金額だけを比較してしまうと、「安く見えたが内容が薄かった」「後から追加工事で高くなった」といった失敗につながりやすくなります。

本章では、まず公的データを根拠に費用相場の全体像を整理し、そのうえで「なぜ金額に幅が出るのか」を分かりやすく解説します。

 

 

公的データから見る「大規模修繕工事の費用相場」

 

大規模修繕工事の費用については、国の調査・指針でも一定の目安が示されています。

国土交通省が公表しているマンション管理に関するQ&Aでは、大規模修繕工事の工事費は、1戸あたり100万〜250万円程度が一つの目安とされています。

これは、特定の工事内容を断定した数字ではなく、全国の実態調査や過去の事例を踏まえた「標準的なレンジ」です。

つまり、100万円/戸で収まるケースもあれば200万円を超えるケースもあり条件によっては250万円近くになることもあるという前提で捉える必要があります。

 

 

「100万〜250万円/戸」と幅が出る理由

 

同じ「30戸のマンション」でも、総額が3,000万円台で収まるケースもあれば、5,000万円、6,000万円規模になるケースも珍しくありません。

この差が生まれる最大の理由は、工事の中身と建物条件が一律ではないからです。

大規模修繕工事の費用は、主に次のような要素の組み合わせで決まります。

  • 建物の築年数と劣化状況
  • 外壁・屋上・バルコニーなど工事範囲の広さ
  • 下地補修の量(ひび割れ・爆裂・タイル浮きなど)
  • 防水工事の工法・仕様
  • 足場の組みやすさ(建物形状・敷地条件)
  • 近隣環境への配慮が必要かどうか

これらの条件が重なるほど、「同じ戸数でも費用が大きく変わる」のが大規模修繕工事の特徴です。

 

 

よくある誤解|「平均額=自分たちの適正価格」ではない

 

費用相場の記事でよくある失敗が、平均値だけを見て判断してしまうことです。

たとえば、「平均で1戸あたり120万円と書いてあったから、うちもそれくらいだろう」と考えてしまうケースです。

しかし平均値は、劣化が軽いマンション標準的な工事範囲のマンション劣化が進んだマンションこれらをすべて含めた結果の数字です。

そのため、下地補修が多い屋上防水を全面改修するバルコニー床が広いといった条件があるマンションでは、平均より高くなるのはむしろ自然です。

逆に、劣化が軽微工事項目を整理できている足場効率が良いといった条件が揃えば、平均より抑えられるケースもあります。

 

 

ここで押さえるべき結論

 

この時点で、まず押さえておいていただきたいポイントは次の3点です。

  • 📌 大規模修繕工事の費用相場は「100万〜250万円/戸」という“幅”で考える
  • 📌 金額の差は「業者の良し悪し」より「建物条件・工事内容」で決まる
  • 📌 自分たちのマンションが“どの位置にあるか”を把握することが最重要

次の章では、この相場感をさらに具体化するために、戸数から30秒で概算できる「ざっくり試算方法」を紹介し、読者の方が「自分たちの場合はいくらぐらいか」を即座にイメージできるようにしていきます。

 

 

2. まずは30秒試算|あなたのマンションは総額いくら?

 

大規模修繕工事の費用相場分布図

 

いきなり結論|最初は「戸数×相場レンジ」で考えてOK

 

大規模修繕工事の費用を考えるとき、最初から細かい内訳や工法を理解する必要はありません。

まずは、「戸数 × 公的に示されている相場レンジ」で、ざっくりした総額イメージを持つことが重要です。

国土交通省が示す大規模修繕工事の目安では、1戸あたり100万〜250万円程度がひとつの基準とされています。

この数字を使えば、どのマンションでも30秒で概算が可能です。

 

 

計算方法はこれだけ|「戸数 × 100万〜250万」

 

計算はとてもシンプルです。

概算総額 = 戸数 ×(100万〜250万円)

たとえば、よくある規模で当てはめると次のようになります。

 

 

戸数別|ざっくり総額イメージ(最初に見るべき目安)

 

30戸マンションの場合

ゾーン 概算金額
低め 30戸 × 100万円 = 約3,000万円
中心帯 30戸 × 125万円 = 約3,750万円
高め 30戸 × 150万円 = 約4,500万円
上振れ 30戸 × 250万円 = 約7,500万円

50戸マンションの場合

ゾーン 概算金額
低め 約5,000万円
中心帯 約6,250万円
高め 約7,500万円
上振れ 約1億2,500万円

80戸マンションの場合

ゾーン 概算金額
低め 約8,000万円
中心帯 約1億円
高め 約1億2,000万円
上振れ 約2億円

ここで重要なのは、「この中のどれが正解か」ではなく、「どのゾーンに入りそうか」を考えることです。

 

 

多くのマンションが入りやすい「中心帯」とは?

 

実際の大規模修繕工事では、すべてのマンションが250万円/戸近くまで跳ね上がるわけではありません。

国の実態調査を見ても、100万〜150万円/戸あたりに集中するケースが多いのが現実です。

つまり、築15年前後1回目の大規模修繕外壁・屋上・バルコニー・鉄部・シーリングが標準範囲このような条件であれば、「中心帯(100〜150万円/戸)」に入る可能性が高いと考えてよいでしょう。

 

 

逆に「高めゾーン」に入りやすいのはこんなケース

 

一方で、次のような条件が重なると、150万円/戸を超え、200万円以上になるケースも珍しくありません。

  • 築20年以上で下地劣化が進んでいる
  • タイル浮き・爆裂など補修量が多い
  • 屋上防水を全面改修する必要がある
  • バルコニー床面積が広い
  • 建物形状が複雑で足場効率が悪い
  • 近隣環境への配慮(養生・制限)が多い

この場合、「相場より高い=ぼったくり」ではなく、工事内容が相場レンジの上側に寄っていると理解することが大切です。

 

 

よくある失敗|「低めの数字」だけを信じてしまう

 

ここで注意したいのが、最初から“一番安い数字”を前提に話を進めてしまうことです。

たとえば、「30戸だから3,000万円くらいでできるはず」と決め打ちしてしまうと、必要な下地補修が削られる防水仕様が最低限になる後から追加工事が発生するといった形で、結果的に高くつくケースが多く見られます。

大規模修繕工事では、“安く見せる見積”より“現実的なレンジ”を理解しているかが、失敗を避ける分かれ道になります。

 

 

見出し2のまとめ|この時点で持つべき費用感

 

この段階で、読者の方が持っておくべき感覚は次の3点です。

  • 📌 大規模修繕工事は 戸数×100万〜250万円 が基本の考え方
  • 📌 多くのマンションは 100〜150万円/戸あたりに収まりやすい
  • 📌 自分のマンションが「低め・中心帯・高め」のどこに入りそうかを考えることが重要

次の章では、この概算をさらに一歩進めて、「なぜ同じ戸数でも金額が変わるのか」=費用を左右する具体的な条件を、チェック形式で分かりやすく解説していきます。

 

 

3. 早見表|30戸・50戸・80戸〜の費用目安

 

 

 

この章の役割|「相場」を“感覚”ではなく“数字の幅”で理解する

 

前章では、「戸数 × 100万〜250万円」 という考え方で、大規模修繕工事の概算イメージをつかみました。

ただし実際の検討段階では、「低め・中心帯・高め」のどのゾーンに入りそうかを、もう一段具体的に把握しておくことが重要です。

そこでこの章では、よくある規模ごとに “現実的な費用レンジ”を早見表的に整理し、読者が自分のマンションを当てはめて考えられるようにします。

 

 

30戸前後のマンション|最も相談が多い標準規模

 

30戸前後は、分譲・賃貸ともに非常に多い規模です。

費用の振れ幅も比較的分かりやすく、相場感を掴む基準になります。

低めゾーン
(約3,000万円前後)

築10〜12年程度

下地補修が少ない

外壁塗装+屋上防水が中心

バルコニー床・共用部が比較的コンパクト

中心帯
(約3,500万〜4,000万円前後)

築15年前後(1回目の大規模修繕)

外壁・屋上・バルコニー・鉄部・シーリングを標準的に実施

下地補修は点在レベル

高めゾーン
(4,500万円以上)

築20年近く、劣化が進行

下地補修量が多い

屋上防水の全面改修

バルコニー床面積が広い

👉 同じ30戸でも「1,000万円以上の差」が出るのが現実です。

 

 

50戸前後のマンション|金額差が“判断ミス”につながりやすい規模

 

50戸規模になると、「金額が大きい=高すぎるのでは?」と感じやすくなりますが、実際は内容次第で妥当性が大きく変わります。

低めゾーン
(約5,000万円前後)

劣化が軽微

工事項目を優先順位付けして整理

足場効率が良い建物形状

中心帯
(約6,000万〜6,500万円前後)

標準的な1回目の大規模修繕

外壁+屋上+バルコニー+共用部を一通り実施

仕様が適正に整理されている

高めゾーン
(7,500万円以上)

下地補修が広範囲

防水範囲が多い(屋上+ルーフバルコニー等)

近隣配慮や施工制限が多い

👉 この規模では、「高い・安い」より「中身を見ないと判断できない」という認識が不可欠です。

 

 

80戸以上のマンション|総額1億円超が“普通”になる世界

 

80戸を超えると、大規模修繕工事は完全に「プロジェクト」レベルになります。

低めゾーン
(約8,000万〜9,000万円)

劣化が軽く、工事項目を絞って実施

足場効率・作業効率が良い

設計・仕様が明確で無駄が少ない

中心帯
(約1億円前後)

標準的な修繕範囲

外壁・屋上・バルコニー・鉄部・共用部を一式

管理・安全・近隣配慮を含めた適正施工

高めゾーン
(1億2,000万円以上)

2回目以降の修繕

下地劣化・防水全面更新

設備更新や特殊条件が絡む

👉 この規模では、1000万円単位での差が“普通”に発生します。

 

 

なぜ早見表は「目安」でしかないのか

 

ここまでの金額は、あくまで 公的な相場レンジ(100万〜250万円/戸) を前提に、現実的な工事内容を当てはめた目安です。

実際には、下地補修量防水工法の選択足場の組み方工事範囲の優先順位といった“中身”次第で、早見表のどこに着地するかが決まります。

そのため、「この表より高いからダメ」「この表より安いから良い」と単純に判断するのは危険です。

 

 

ここで掴むべき感覚

 

この章で押さえておくべきポイントは次の通りです。

  • 📌 大規模修繕工事は 戸数が同じでも数千万円単位で差が出る
  • 📌 重要なのは「総額」ではなく どのゾーンに入りそうか
  • 📌 金額の妥当性は、次章で解説する“条件”を見て初めて判断できる

次の章では、「なぜ高くなるのか/なぜ抑えられるのか」を、読者自身がチェックできる形で整理していきます。

 

 

4. 費用が決まる“スイッチ”|高くなる/抑えやすい条件をチェックリストで整理

 

 

 

この章が重要な理由|「金額の差」には必ず理由がある

 

大規模修繕工事の相談で非常に多いのが、「同じ戸数なのに、A社は4,000万円、B社は5,500万円だった」「この金額差は、どちらかがおかしいのでは?」という疑問です。

結論から言うと、金額差そのものが問題なのではなく、その差が「どこから生まれているか」を理解していないことが問題です。

大規模修繕工事の費用は、偶然決まるものではありません。

必ず “費用が動くスイッチ” が存在し、そのスイッチがいくつ入っているかで、低めゾーン・中心帯・高めゾーンのどこに着地するかが決まります。

 

コンクリートのひび割れと爆裂の比較写真

【チェック1】下地補修量が多いと、一気に費用が上がる

 

外壁やコンクリートの劣化補修(ひび割れ、欠損、爆裂など)は、大規模修繕工事の中でも 最も費用がブレやすい項目 です。

  • 劣化が点在レベル → 影響は限定的
  • 劣化が広範囲 → 数百万円〜1,000万円単位で増加

ここで重要なのは、下地補修は「見た目」では正確に判断できないという点です。

目視調査だけで「問題なさそう」と判断してしまうと、工事中に想定以上の劣化が見つかり、追加工事として後から費用が膨らむケースが多発します。

 

 

【チェック2】防水工事の範囲と工法で金額は大きく変わる

 

防水工事も、費用を左右する大きな要因です。

  • 屋上だけなのか
  • バルコニー・ルーフバルコニーまで含むのか
  • 部分補修で済むのか、全面改修が必要なのか

さらに、防水の工法・仕様によっても金額は変わります。

「同じ防水工事」と書かれていても、耐用年数・施工工程・保証内容がまったく違うことも珍しくありません。

防水範囲と仕様が明確になっていない見積は、金額比較をしてはいけない見積だと考えてください。

 

 

【チェック3】建物形状・足場条件が悪いとコストは跳ね上がる

 

建物形状による足場コストの違い

 

 

足場は「どのマンションでも同じ」と思われがちですが、実際は違います。

  • 建物形状が複雑
  • 敷地が狭い
  • 高低差がある
  • 隣地との距離が近い

こうした条件が重なると、足場の組み方が複雑になり、仮設費用が増加します。

足場は全体工事費の中でも大きな割合を占めるため、ここが重くなると総額も一気に上振れします。

 

 

【チェック4】工事範囲をどこまで含めるかで“別物の金額”になる

 

大規模修繕工事と一口に言っても、どこまでを「今回やる工事」とするかはマンションごとに異なります。

  • 外壁・屋上のみ
  • バルコニー・共用廊下・階段まで含む
  • 鉄部・付帯部をどこまで塗装するか

工事範囲が広がれば、その分費用が増えるのは当然です。

重要なのは、「A社は高い、B社は安い」ではなく、「工事範囲が同じか」を揃えて比較しているかという視点です。

 

 

【チェック5】近隣環境・施工制限が多いと見えないコストが増える

 

都市部や住宅密集地のマンションでは、近隣への配慮が工事費に影響するケースが少なくありません。

  • 作業時間の制限
  • 養生範囲の拡大
  • 搬入・搬出ルートの制約
  • 駐車・資材置き場の確保

これらは見積書に大きく書かれないこともありますが、現場管理・仮設・手間として確実にコストに反映されます。

 

 

ここが分かれ道|「高い見積=悪」ではない

 

ここまでのチェック項目を見ていただくと分かる通り、費用が高くなるのには必ず理由があります。

  • 劣化が進んでいる
  • 工事範囲が広い
  • 条件が厳しい

これらが揃っているにも関わらず、相場の下限に近い見積が出てきた場合の方が、むしろ注意が必要です。

削られやすいのは、下地補修防水仕様管理・安全・近隣配慮といった、完成後には見えにくいが、長期的に重要な部分です。

 

 

ここで持つべき判断軸

 

この章で押さえておきたいポイントは次の通りです。

  • 📌 費用差は「業者の差」ではなく「条件の差」で生まれる
  • 📌 自分たちのマンションで、どの“スイッチ”が入っているかを整理する
  • 📌 金額だけでなく「なぜその金額か」を説明できる見積が適正

次の章では、この考え方をさらに一歩進めて、「見積書の内訳をどう見れば妥当性が判断できるのか」を、具体的な内訳項目と比率の考え方を使って解説していきます。

 

 

5. 内訳が分かれば相見積もりに勝てる|費用の中身(工種別)と比率の考え方

 

大規模修繕工事の費用内訳円グラフ

 

なぜ「総額」だけを比べてはいけないのか

 

大規模修繕工事の相見積もりで、最も多い失敗が「総額だけを見て安い・高いを判断してしまうこと」です。

例えば、A社:4,200万円B社:3,800万円この数字だけを見ると、B社の方が魅力的に見えます。

しかし実際には、A社は下地補修・防水仕様・管理体制まで含めた内容B社は一部工事項目が簡略化、または「一式」表記で中身が不明というケースは非常に多く、金額差=工事品質や耐久性の差につながることも珍しくありません。

だからこそ、大規模修繕工事では「いくらか」ではなく「何にいくら掛かっているか」を見る必要があります。

 

 

大規模修繕工事の主な内訳項目(工種別)

 

見積書の内訳は会社ごとに表現が異なりますが、大きく分けると、以下のような工種で構成されています。

  • 仮設工事(足場・養生など)
  • 下地補修工事(ひび割れ・欠損・爆裂補修など)
  • 外壁塗装工事
  • 防水工事(屋上・バルコニーなど)
  • シーリング工事
  • 鉄部・付帯部塗装
  • 共用部工事(廊下・階段・手すり等)
  • 現場管理費・諸経費

重要なのは、これらがすべて適切に計上され、内容が明確になっているかです。

 

 

比率で見ると見えてくる「妥当性」

 

相見積もりでは、各項目の金額を細かく暗記する必要はありません。

代わりに有効なのが、「全体に対して、どの項目がどれくらいの割合を占めているか」という視点です。

一般的な目安としては、以下の通りです。

工事項目 全体に占める割合(目安)
仮設工事(足場など) 全体の 15〜25%前後
下地補修+外壁関連 30〜40%前後
防水工事 15〜30%前後
その他(鉄部・共用部・諸経費など) 残り

このバランスが極端に崩れている場合、どこかが削られている、または逆に過剰になっている可能性があります。

 

 

要注意①|「一式」表記が多すぎる見積書

 

相見積もりで最も注意すべきなのが、「一式」表記が多い見積書です。

⚠️ 下地補修 一式
⚠️ 防水工事 一式
⚠️ 塗装工事 一式

このような見積では、補修量はどれくらい想定しているのかどの工法・仕様なのか追加が出た場合の扱いはどうなるのかが分かりません。

結果として、工事中に追加費用が発生しやすく、最終金額が膨らむリスクがあります。

 

 

要注意②|下地補修・防水が極端に安い場合

 

見積を比べたときに、「他社より明らかに安い項目」がある場合は要注意です。

特に注意したいのが、下地補修工事防水工事これらは、完成後には見えにくく、削っても分かりづらいため、価格調整の対象になりやすい項目です。

しかし、下地補修が不足 → 数年で再劣化防水仕様が最低限 → 雨漏り・保証トラブルといった形で、後から大きな問題になるケースが非常に多いのも事実です。

 

 

「良い見積書」の共通点とは

 

適正な見積書には、共通した特徴があります。

  • 工事項目ごとに数量・範囲・仕様が明記されている
  • 下地補修・防水の考え方が説明できる
  • 金額の根拠を口頭でも書面でも説明できる
  • 追加工事が発生する条件が事前に示されている

このような見積書は、金額が多少高く見えても、結果的にトータルコストが安くなるケースが多いです。

 

 

相見積もりで見るべき“本当のポイント”

 

この章で押さえておくべきポイントは次の通りです。

  • 📌 総額だけで判断せず、内訳と比率を見る
  • 📌 「一式」表記が多い見積は比較できない
  • 📌 下地補修・防水が安すぎる見積は要注意
  • 📌 金額の根拠を説明できる見積が「適正」

次の章では、これまでの考え方を踏まえたうえで、「同じ30戸でもここまで変わる」3つのモデル見積を紹介し、より具体的に費用の違いをイメージできるようにしていきます。

 

 

6. 3モデル見積|同じ30戸でもここまで変わる

 

 

 

この章の目的|「相場の幅」を“自分の物件像”に変換する

 

これまで解説してきた通り、大規模修繕工事の費用は 戸数だけでは決まりません。

そこでこの章では、30戸前後のマンションを例に、実際によくある条件を3つのモデルに分けて整理します。

「安い・高い」の感覚論ではなく、どんな条件なら、どの金額帯になるのかを具体的にイメージできるようにすることが目的です。

 

 

モデル①|軽めモデル(築10〜12年・劣化が軽微なケース)

 

想定条件

  • 築10〜12年程度(1回目の修繕だが劣化は軽め)
  • 外壁のひび割れ・欠損が点在レベル
  • 屋上防水は部分補修または簡易更新
  • バルコニー床・共用部の面積が比較的小さい
  • 建物形状がシンプルで足場効率が良い

工事範囲のイメージ

  • 外壁塗装
  • 必要最小限の下地補修
  • 屋上防水(部分)
  • 鉄部・付帯部塗装(限定的)

費用感の目安

総額:約3,000万〜3,500万円

戸あたり:約100万〜115万円

ポイント

このモデルは、「早めに修繕を検討し、劣化が進む前に対応できたケース」です。

工事内容を絞れるため金額は抑えられますが、診断を省略して“軽め前提”で進めるのは危険です。

見た目以上に劣化が進んでいる場合、工事中に追加が発生しやすくなります。

 

 

モデル②|標準モデル(築15年前後・最も多いパターン)

 

想定条件

  • 築15年前後(1回目の大規模修繕)
  • 外壁・屋上・バルコニーに一定の劣化が見られる
  • 下地補修は点在〜中程度
  • 防水は全面更新が必要
  • 一般的な分譲・賃貸マンションの仕様

工事範囲のイメージ

  • 外壁塗装
  • 下地補修(ひび割れ・欠損・浮き補修)
  • 屋上防水(全面)
  • バルコニー防水
  • シーリング打替え
  • 鉄部・共用部一式

費用感の目安

総額:約3,800万〜4,500万円

戸あたり:約125万〜150万円

ポイント

多くのマンションが、この標準モデルに該当します。

見積金額がこのゾーンに入っている場合、「高いか安いか」ではなく「内容が標準を満たしているか」を確認することが重要です。

 

 

モデル③|重めモデル(築20年以上・劣化が進行したケース)

 

想定条件

  • 築20年以上、または2回目以降の修繕
  • 外壁のひび割れ・爆裂・タイル浮きが多い
  • 下地補修量が多く、工期も長くなる
  • 屋上・バルコニー防水を全面更新
  • 建物形状が複雑、または施工制限が多い

工事範囲のイメージ

  • 外壁全面補修+塗装
  • 大量の下地補修
  • 屋上・バルコニー防水(全面)
  • シーリング全面打替え
  • 共用部・鉄部を広範囲に更新

費用感の目安

総額:約5,000万〜6,000万円以上

戸あたり:約170万〜200万円超

ポイント

このモデルでは、「安く抑える」より「再劣化を防ぐ」ことが最優先になります。

ここで無理に金額を下げると、数年後に再修繕や雨漏り対応が必要になり、結果的にトータルコストが高くなるケースが非常に多いです。

 

 

3モデルを比べて見える「費用差の正体」

 

3つのモデルを並べると、費用差の理由がはっきり見えてきます。

  • 劣化が軽い → 工事範囲を絞れる → 費用が抑えられる
  • 劣化が進む → 下地・防水が増える → 費用が上がる

つまり、金額の差は「業者の都合」ではなく「建物の状態と工事内容」から生まれているのです。

 

 

自分のマンションはどのモデルに近いか?

 

この章で考えていただきたいのは、「どのモデルが正しいか」ではありません。

  • 自分たちのマンションは、どのモデルに近いか
  • そのモデルで、工事内容は妥当か
  • 無理に下のモデルに寄せていないか

これらを整理することで、見積金額に対する“納得感”が大きく変わります。

次の章では、ここまでの内容を踏まえたうえで、「見積書で絶対に見落としてはいけない判断ポイント」を解説し、失敗しやすいパターンを具体的に整理していきます。

 

 

7. 見積書の読み方|金額の大小より「削ってはいけない所」を見抜く

 

 

 

この章の結論|大規模修繕は「削った瞬間に失敗が決まる項目」がある

 

大規模修繕工事で後悔している管理組合・オーナー様の多くが、工事後にこう口を揃えて言います。

「もう少し、見積の中身を見ておけばよかった」

金額が数千万円単位になる工事では、どうしても「安い方がいい」「少しでも抑えたい」と考えてしまいます。

しかし大規模修繕には、削ると“必ず後で問題になる項目”が存在します。

この章では、見積書を見るときに 絶対に軽視してはいけないポイント を整理します。

 

 

削ってはいけない①|下地補修(ここを削ると数年後に再劣化)

 

下地補修は、外壁塗装や防水工事の土台となる工事です。

  • ひび割れ補修
  • 欠損補修
  • 爆裂補修
  • タイル浮き補修

これらが不十分な状態で上から塗装・防水をしても、数年で再劣化が起きる可能性が非常に高いです。

要注意なのは、「下地補修 一式」「必要に応じて対応」といった曖昧な表記です。

この場合、どこまで補修する想定なのかが不明確なため、工事中に「想定外」として追加費用が発生しやすくなります。

 

 

削ってはいけない②|防水工事の仕様・工法(保証と耐久性に直結)

 

防水工事は、建物の寿命を左右する重要な工事です。

しかし見積書では、工法名が書かれていない厚み・工程が不明保証条件が曖昧といったケースも少なくありません。

同じ「屋上防水」でも、耐用年数メンテナンス性将来の再修繕コストが大きく変わります。

安い防水=得ではなく、将来まで含めて適正かどうかを見る視点が必要です。

 

 

削ってはいけない③|現場管理・品質管理・安全対策

 

見積書の中で、つい軽く見られがちなのが 現場管理費・諸経費 です。

「ここを削れば安くなるのでは?」と思われがちですが、実際には、管理が手薄になる工程管理が甘くなる近隣対応が後手に回る安全管理が形だけになるといったリスクが高まります。

特に居住者が住みながら行う大規模修繕では、管理体制の差が“工事中のトラブル量”に直結します。

 

 

削ってはいけない④|共通仮設・養生(クレームと事故を防ぐ)

 

仮設工事や養生は、完成後には残らないため軽視されがちですが、居住者の安全近隣への配慮工事のスムーズさに直結する重要項目です。

ここを削ると、クレームが増える工期が延びる結果的にコストが上がるといった “見えない損失” が発生します。

 

 

「安い見積」が危険な理由|削られる順番は決まっている

 

極端に安い見積が出てきた場合、多くは次の順番で削られています。

  1. 下地補修
  2. 防水仕様
  3. 管理・安全・養生
  4. 仕上げの工程・回数

完成直後は見た目がきれいでも、数年後に不具合が出やすい構造になってしまいます。

 

 

良い見積書の共通点|ここをチェックすれば失敗しない

 

適正な見積書には、次のような特徴があります。

  • 削ってはいけない項目が明確に書かれている
  • 工事内容と金額の理由を説明できる
  • 追加費用が発生する条件が事前に示されている
  • 「なぜこの仕様なのか」が論理的に説明されている

これらが揃っていれば、金額が多少高く見えても、結果的に安心できる工事になります。

 

 

判断基準を「価格」から「中身」へ

 

この章のポイントを整理します。

  • 📌 大規模修繕には 削ってはいけない工事項目 がある
  • 📌 安い見積ほど、その項目が削られている可能性が高い
  • 📌 見積書は「金額」ではなく「内容と理由」で判断する

次の章では、ここまでの考え方を踏まえて、「費用を抑えつつ失敗しないための具体策」を整理し、コストを“下げる”のではなく “最適化する”方法 を解説していきます。

 

 

8. 費用を抑える方法|削るのではなく「最適化」で総額を下げる

 

 

 

この章の結論|大規模修繕は“削減”より“整理”で安くなる

 

大規模修繕工事で費用を抑えようとした結果、下地補修を削った防水仕様を落とした管理体制を簡略化したこうした判断をすると、ほぼ確実に後悔します。

一方で、工事の考え方や進め方を整理するだけで、総額が下がるケースも数多くあります。

この章では、品質を落とさずに費用を抑えるための「現実的な最適化ポイント」を解説します。

 

 

最適化①|建物診断で「やる工事/やらない工事」を仕分ける

 

費用が膨らむ最大の原因は、「本当は今やらなくていい工事」まで一緒に入れてしまうことです。

  • 今回必須の工事
  • 次回でも間に合う工事
  • 応急対応で十分な工事

これらを、建物診断をもとに整理するだけで数百万円単位の差が出ることがあります。

重要なのは、「削る」のではなく 「今やる必要があるかどうか」を根拠で判断することです。

 

 

最適化②|工事仕様を統一して“比較できる相見積もり”にする

 

相見積もりで失敗しやすいのが、業者ごとに仕様がバラバラな状態で金額比較をしてしまうことです。

  • 塗料のグレードが違う
  • 防水工法が違う
  • 補修範囲の考え方が違う

この状態では、安い・高いの判断ができません。

事前に、工事範囲仕様(グレード)補修の考え方をある程度揃えておくことで、“内容が同じで金額だけが違う見積”になり、無駄に高い提案を排除しやすくなります。

 

 

最適化③|工事範囲の「分割」は慎重に判断する

 

「今回は外壁だけ」「防水は次回に回す」という分割工事は、一見コストを抑えられそうに見えます。

しかし実際には、足場を2回組む工事管理が2回発生する共通仮設が重複するといった理由で、トータルでは高くなるケースも多いです。

分割が有効なのは、劣化状況に明確な差がある足場不要な範囲がある将来計画と整合が取れているといった条件が揃った場合のみです。

 

 

最適化④|発注方式の違いでコスト構造を理解する

 

大規模修繕工事には、いくつかの発注方式があります。

  • 設計監理方式
  • 責任施工方式
  • コンサルタント方式

どれが正解というわけではありませんが、方式によってコストのかかり方が違うことは理解しておく必要があります。

管理を重視するかコストを重視するか手間をどこまでかけられるかこの整理をせずに方式を選ぶと、「思ったより費用がかかった」という結果になりやすくなります。

 

 

最適化⑤|「安く見える提案」に飛びつかない

 

最終的に費用を抑えられるかどうかは、初期段階での判断に大きく左右されます。

  • 極端に安い提案
  • 内容説明が曖昧な提案
  • 「とりあえず安くできます」という言葉

これらは、短期的には魅力的でも、中長期的にはコスト増につながる可能性が高いです。

 

 

“賢く抑える”ための判断軸

 

この章のポイントを整理します。

  • 📌 大規模修繕は「削る」より「整理」で安くなる
  • 📌 建物診断と優先順位付けが最大のコスト調整ポイント
  • 📌 仕様統一と比較可能な相見積もりが無駄を防ぐ
  • 📌 分割工事や発注方式は“条件次第”で判断する

次の章では、ここまでの内容を踏まえて、長期修繕計画・修繕積立金とどう向き合うべきかを整理し、「資金面の不安」を解消していきます。

 

 

9. 長期修繕計画・修繕積立金とのつなぎ|「いくら必要か」を資金計画で固める

 

 

 

この章の結論|工事費の正解は「金額」ではなく「計画との整合」

 

大規模修繕工事の検討が進むと、ほぼ必ず次の壁にぶつかります。

「相場は分かったが、うちの積立金で足りるのか?」

ここで重要なのは、工事費の多寡そのものより、“長期修繕計画と資金計画が噛み合っているか”です。

大規模修繕は単発の工事ではなく、長期修繕計画という“全体設計”の一部として考える必要があります。

 

 

長期修繕計画は「見積のため」にも必要な資料

 

長期修繕計画というと、「積立金の説明資料」「形式的な書類」と思われがちですが、実務的には 見積内容を適正化するための重要資料 でもあります。

計画が整理されていないと、今回やるべき工事が曖昧になる業者ごとに工事範囲がバラつく見積金額の差が大きくなる結果として、比較も判断もできない状態に陥りやすくなります。

 

 

国のガイドラインが示す「考え方の基準」

 

国土交通省は、マンションの長期修繕計画について、一定期間(30年程度)を見据えて修繕項目・周期・概算費用を整理し修繕積立金との整合を図るという考え方を示しています。

重要なのは、「今回の大規模修繕にいくら掛けるか」ではなく、「次回・その次まで含めて無理のない計画か」という視点です。

 

 

修繕積立金が足りない場合の現実的な選択肢

 

見積を取った結果、「積立金が足りない」と分かるケースは珍しくありません。

このときに取り得る選択肢は、大きく分けて次の4つです。

  • 工事範囲・優先順位を再整理する
  • 工事を段階的に分けて実施する
  • 修繕積立金の見直し(段階増額など)
  • 借入(金融機関・公的制度)を活用する

ここで大切なのは、「無理に削る」ではなく「どう組み替えるか」です。

 

 

やってはいけない判断|積立金に合わせて工事内容を削る

 

最も避けたいのが、「積立金の残高ありき」で工事内容を削ってしまう判断です。

下地補修を減らす

防水仕様を落とす

管理・安全を簡略化する

これらは一時的には支出を抑えられても、数年後に再修繕や不具合対応が発生し、結果的に高くつくという結果になりがちです。

 

 

資金計画を“前向きな判断材料”に変えるコツ

 

資金計画は、「できない理由」を探すためのものではありません。

今回どこまでやるのが妥当か

次回に回しても問題ない部分はどこか

将来の負担をどう平準化するか

こうした判断を、感覚ではなく“計画として”整理するための材料です。

長期修繕計画と照らし合わせることで、「この金額なら納得できる」「ここは将来に回せる」といった合意形成もしやすくなります。

 

 

資金計画が整うと判断はブレなくなる

 

この章のポイントを整理します。

  • 📌 大規模修繕費用は長期修繕計画とセットで考える
  • 📌 計画が曖昧だと見積も判断もブレる
  • 📌 積立金不足は「削る」のではなく「組み替える」
  • 📌 将来まで見据えた資金計画が、結果的にコストを抑える

次の章では、**実際の施工事例(またはモデルケース)を使い、「なぜこの金額になったのか」**を具体的に解説していきます。

 

 

10. 施工事例|同規模でも費用が変わった理由を具体的に解説

 

 

 

この章の役割|「相場」を“現実の判断材料”に変える

 

ここまでで、相場レンジ戸数別目安費用が変わる条件見積の見方最適化の考え方を整理してきました。

しかし、読者が本当に知りたいのは、「実際の現場では、なぜこの金額になったのか」というリアルな判断理由です。

そこでこの章では、30〜80戸規模のマンションを想定したモデル事例(実務ベース)を用いて、「同規模でも費用が変わった理由」を具体的に解説します。

※以下は、特定の建物名を伏せた 匿名・モデルケース ですが、実際の現場判断に基づく内容です。

 

 

事例①|30戸・標準的な1回目修繕|中心帯に収まったケース

 

建物条件

  • 戸数:30戸
  • 築年数:約15年
  • 1回目の大規模修繕
  • 建物形状:比較的シンプル

工事範囲

  • 外壁塗装
  • 下地補修(ひび割れ・欠損は点在レベル)
  • 屋上防水(全面)
  • バルコニー防水
  • シーリング打替え
  • 鉄部・共用部一式

工事費用の目安

総額:約3,900万円

戸あたり:約130万円

この金額になった理由

  • 劣化が進みすぎる前に着手できた
  • 下地補修が限定的で済んだ
  • 工事範囲と仕様を事前に整理し、見積条件を統一できた

👉 「相場の中心帯」に最も多い、典型的なケースです。

 

 

事例②|50戸・劣化が進んだ1回目修繕|高めゾーンに入ったケース

 

建物条件

  • 戸数:50戸
  • 築年数:約18年
  • 外壁のひび割れ・爆裂が多い
  • バルコニー床面積が広い

工事範囲

  • 外壁全面補修+塗装
  • 下地補修(数量多)
  • 屋上・バルコニー防水(全面)
  • シーリング全面打替え
  • 共用部・鉄部広範囲

工事費用の目安

総額:約7,800万円

戸あたり:約156万円

この金額になった理由

  • 下地補修量が想定より多く、工程・手間が増えた
  • 防水範囲が広く、材料・工期が増加
  • 居住者・近隣配慮のため、管理・仮設費用が上昇

👉 「戸数が多い=単価が下がる」とは限らない典型例です。

 

 

事例③|80戸超・2回目修繕|最適化で上振れを抑えたケース

 

建物条件

  • 戸数:80戸超
  • 築年数:約25年
  • 2回目の大規模修繕
  • 劣化箇所にばらつきあり

工事範囲

  • 外壁補修+塗装
  • 劣化が進んでいる箇所を重点補修
  • 屋上防水(全面)
  • バルコニーは状態別に範囲を調整
  • 共用部・鉄部は優先順位付けして実施

工事費用の目安

総額:約1億1,000万円

戸あたり:約135万円

この金額になった理由

  • 建物診断をもとに「やる/やらない」を明確化
  • 工事範囲を一律にせず、状態別に最適化
  • 仕様統一により無駄なコストを抑制

👉 規模が大きくても、考え方次第で“中心帯”に近づけられる好例です。

 

 

3つの事例から分かる「本質」

 

これらの事例を並べると、費用を左右しているのは 戸数そのものではない ことが分かります。

  • 📌 劣化状況を正しく把握しているか
  • 📌 工事範囲と仕様を整理できているか
  • 📌 見積条件を揃え、無駄を排除できているか

つまり、「いくら掛かったか」より「なぜその金額になったか」が、判断の軸になります。

 

 

事例は“価格比較”ではなく“判断の材料”

 

この章で伝えたいポイントは次の通りです。

  • 📌 同じ戸数でも、費用は大きく変わる
  • 📌 その差は「判断」と「準備」で生まれる
  • 📌 事例は安さを競うためではなく、考え方を学ぶためのもの

次の章では、ここまでの内容を踏まえ、管理組合・オーナー様からよく寄せられる質問(Q&A)を整理し、検索ニーズをさらに取りこぼさない構成にしていきます。

 

 

11. よくある質問(Q&A)|大規模修繕工事の費用でよくある疑問

 

Q. 大規模修繕工事の費用は、最終的にいくらで決まるのですか?
大規模修繕工事の費用は、「戸数」だけで決まるものではありません。
最終的には、建物の劣化状況(下地補修量)、工事範囲(外壁・屋上・バルコニー・共用部など)、防水・塗装の仕様、建物形状や施工条件、管理・安全・近隣配慮の必要性、といった要素の組み合わせで決まります。
そのため、「30戸だから3,000万円」「50戸だから6,000万円」といった単純な当てはめはできません。
本記事で解説した相場レンジ・モデル見積・事例を照らし合わせ、自分たちのマンションがどのゾーンに近いかを考えることが重要です。

 

 

Q. 見積金額が相場より高いのですが、ぼったくりではないですか?
必ずしもそうとは限りません。
相場より高くなる主な理由としては、下地補修量が多い、防水範囲・仕様が充実している、工事範囲が広い、施工条件が厳しい(近隣・形状など)といった “合理的な理由” があるケースが多いです。
重要なのは、「なぜこの金額なのか」を説明できるかどうかです。
金額の根拠が明確で、工事内容・仕様・管理体制まで説明できる見積であれば、相場より高く見えても 適正価格 である可能性は十分あります。

 

 

Q. 逆に、相場よりかなり安い見積は問題ありませんか?
注意が必要です。
極端に安い見積では、次のような点が削られていることがあります。
下地補修が最低限、防水仕様が簡略化されている、管理・安全・養生が省略されている、工事項目が「一式」表記で不明確。
完成直後は問題がなくても、数年後に不具合や再修繕が必要になるケースは少なくありません。
「安いから良い」ではなく、長期的に見て妥当かどうかで判断することが重要です。

 

 

Q. 相見積もりは何社くらい取るのが適切ですか?
一般的には、2〜3社程度が現実的でおすすめです。
それ以上増やしても、条件整理が難しくなる、比較が煩雑になる、決定までに時間がかかるといったデメリットが出やすくなります。
重要なのは社数ではなく、工事範囲・仕様をある程度揃えた状態で見積を取ることです。

 

 

Q. 見積書で必ず確認すべきポイントはどこですか?
最低限、次の点は確認してください。
下地補修の考え方・範囲、防水工事の工法・仕様・保証、「一式」表記が多すぎないか、管理・安全・近隣配慮が含まれているか、追加工事が発生する条件が明記されているか。
これらが曖昧な見積は、金額比較の対象にしてはいけません。

 

 

Q. 修繕積立金が足りない場合はどうすればいいですか?
まずやるべきことは、工事内容を削ることではありません。
工事範囲の優先順位を整理する、段階的な実施を検討する、修繕積立金の見直しを行う、借入などの資金調達方法を検討するといった選択肢を、長期修繕計画と照らし合わせて検討することが重要です。
短期的に安くしても、中長期で高くつく判断は避けるべきです。

 

 

Q. いつ頃から準備を始めるのが理想ですか?
理想は、工事予定時期の1〜2年前から準備を始めることです。
建物診断、長期修繕計画の確認・見直し、工事範囲・仕様の整理、見積条件の統一。
これらを余裕を持って進めることで、金額・内容ともに納得できる大規模修繕につながります。

 

 

12. まとめ

 

大規模修繕工事の費用は、相場だけで判断するものではなく、「なぜその金額になるのか」を理解することが重要です。

相場は1戸あたり100万〜250万円が目安ですが、実際の金額は 劣化状況・工事範囲・仕様・管理体制 によって大きく変わります。

  • 📌 失敗しないためには、総額ではなく内訳と理由で判断する
  • 📌 削ってはいけない工事項目を理解する
  • 📌 長期修繕計画・資金計画と整合させる

この3点を押さえることが不可欠です。

まずは建物診断を行い、自分たちのマンションに必要な工事内容を整理したうえで、条件を揃えた相見積もりを取ることが、後悔しない大規模修繕工事への近道です。

 

 

 

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