※本記事は2026年1月28日に最新情報へ更新しています。

マンションやビルの大規模修繕工事を検討し始めたとき、
といった疑問や不安を感じる管理組合・オーナー様は少なくありません。
大規模修繕工事は、数千万円から場合によっては億単位の費用がかかる一大プロジェクトです。にもかかわらず、専門的な内容が多く、業者の説明が正しいのか判断できないまま話が進んでしまうケースも多く見受けられます。
私たちは、創業38年以上にわたり大規模修繕工事を専門に手がけてきた株式会社幸成(こうせい)です。マンション・ビルの外壁改修、防水工事、共用部改修などを中心に、これまで数多くの管理組合・オーナー様の修繕工事をサポートしてきました。
その経験から言えるのは、
大規模修繕工事の成否は、工事が始まる前の「判断」と「準備」でほぼ決まるということです。
本記事では、大規模修繕工事の基礎知識から、工事内容・時期・費用相場、発注方式や業者選び、そして実際によくある失敗事例とその回避策まで、管理組合・オーナー様が「納得して判断するために必要な情報」を専門業者の視点から分かりやすく解説します。
「まだ具体的に決まっていない」「検討段階で情報を整理したい」という方にも役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
マンションやビルの大規模修繕工事を検討し始めた管理組合・オーナー様の多くが、最初につまずくのが「そもそも大規模修繕工事とは、何をどこまで行う工事なのか分からない」という点です。
外壁塗装や防水工事といった言葉は聞いたことがあっても、
を正確に理解できていないまま検討が進んでしまうケースは少なくありません。
しかし、大規模修繕工事は進め方や考え方を誤ると、数千万円単位の無駄や将来的なトラブルにつながる工事です。まずは、「大規模修繕工事とは何か」を正しく理解することが、失敗しないための絶対条件になります。
大規模修繕工事の目的を一言で表すなら、「建物を新しくする工事」ではなく、「建物の性能を回復・維持する工事」です。
マンションやビルは、完成した瞬間から劣化が始まります。外壁は紫外線や雨風にさらされ、防水層は年数とともに性能が低下し、鉄部には錆が発生し、コンクリートにはひび割れが生じます。これらの劣化は、見た目の問題だけではありません。
劣化を放置すると、
といった安全性や建物寿命に直結する重大なリスクへと発展します。
大規模修繕工事は、こうした劣化を計画的に修復し、建物の安全性を確保し、居住者・利用者が安心して使い続けられる状態を維持し、将来の修繕コストを抑えるために行う、いわば「建物の健康診断と治療」のような工事なのです。
大規模修繕工事と混同されやすいのが、「小規模修繕」や「部分補修」です。この違いを理解していないと、後々大きな失敗につながります。
| 項目 | 小規模修繕 | 大規模修繕工事 |
|---|---|---|
| 主な内容 |
|
|
| 対象範囲 | “症状が出ている箇所のみ” | 建物全体 |
つまり、小規模修繕が「対症療法」だとすれば、大規模修繕工事は「根本治療+予防」という位置づけになります。
「今回は応急処置で済ませたつもりが、数年後により大規模で高額な工事が必要になった」というケースの多くは、この違いを正しく理解しないまま判断してしまった結果です。
大規模修繕工事が計画的に行われる理由は、工事の規模と金額の大きさにあります。マンション・ビルの大規模修繕工事では、数千万円、規模によっては億単位の費用が動くことも珍しくありません。
そのため、修繕積立金とのバランスや工事時期の調整、居住者・利用者への影響を考慮せずに進めてしまうと、資金不足、合意形成の失敗、工事中トラブルといった問題が発生します。
大規模修繕工事は、「突然やる工事」ではなく、「10年・20年先を見据えて準備する工事」です。長期修繕計画をベースに、どの工事を、どのタイミングで、どこまで行うのかを整理して進めることが、結果的にコストとリスクを抑えることにつながります。
大規模修繕工事を「とりあえず外壁をきれいにする工事」「業者に任せておけば何とかなる工事」と誤解したまま進めると、次のような問題が起こりがちです。
⚠️ 誤解したまま進めた場合のリスク
これらの多くは、「大規模修繕工事の目的と全体像を理解しないまま判断してしまうこと」が原因です。
まずは、「大規模修繕工事とは何のために行う工事なのか」「小規模修繕と何が違うのか」を正しく理解すること。それが、失敗しない大規模修繕工事の最初の一歩になります。
大規模修繕工事の基本を理解したあと、多くの管理組合・オーナー様が次に悩むのが、「本当に今、大規模修繕工事を行う必要があるのか」という点です。
雨漏りも起きていない、外壁もまだ大きく崩れていない。そうした状況を見ると、「もう少し先でも大丈夫ではないか」と感じるのは自然なことです。
しかし、大規模修繕工事は“問題が起きてから行う工事”ではありません。問題が起きる前に、建物全体を守るために行う工事です。
ここでは、「まだ大丈夫」という判断がなぜ危険なのか、そして大規模修繕工事が必要とされる本当の理由を、専門業者の視点から整理して解説します。
建物の劣化は、必ずしも目に見える形で進むわけではありません。外壁の色あせや細かなひび割れは比較的分かりやすい劣化ですが、実際に深刻なのは、内部で静かに進行する劣化です。
例えば、屋上やバルコニーの防水層は、紫外線、雨水、温度変化といった影響を長年受け続けています。表面上は大きな異常がなくても、内部では防水性能が低下し、徐々に水が浸入し始めているケースは珍しくありません。
この段階で大規模修繕工事を行えば、比較的軽微な補修で済むことが多く、費用も抑えられます。
しかし劣化を放置して雨漏りが発生すると、
へと被害が拡大し、結果的に修繕費用が大きく膨らむことになります。
マンションやビルの外壁タイルやコンクリートは、経年劣化によって浮きや剥離が発生します。これを放置すると、タイルやコンクリート片が落下する事故につながる可能性があります。
こうした事故は、通行人、居住者、建物利用者の命や身体に関わる重大な問題です。
管理組合やオーナーには、建物を安全な状態に保つ管理責任があります。「見た目はそこまで悪くない」「今は事故が起きていない」という理由だけで判断することはできません。
大規模修繕工事は、単なる美観回復ではなく、事故を未然に防ぎ、法的・社会的な責任リスクを回避するための工事であるという点は、非常に重要なポイントです。
マンションやビルの資産価値は、築年数だけで決まるわけではありません。実際には、どのタイミングで、どのような修繕工事を、どれだけ計画的に行ってきたかという修繕履歴が、大きく評価に影響します。
適切な時期に大規模修繕工事を実施している建物は、外観や共用部が整っている、雨漏りなどのリスクが低い、将来の修繕計画が見えやすいと判断され、賃貸物件であれば入居率の安定、分譲マンションであれば売却時の評価向上につながります。
一方で、修繕を先延ばしにしている建物は、「将来、大きな修繕費がかかるのではないか」と見なされ、資産価値が下がる要因になります。
大規模修繕工事を先延ばしにする理由として、「まだ使えている」「今すぐ困っていない」という声は非常に多く聞かれます。
しかし実際には、この判断が結果的に下地補修の増加、工事範囲の拡大、工期の長期化を招き、最も修繕コストを高くしてしまうケースが少なくありません。
劣化初期に対応すれば済んだはずの工事が、数年後には「大規模な再修繕」になってしまう。これは現場で非常によく見られる失敗例です。
大規模修繕工事は、「やるか・やらないか」ではなく、「いつ・どこまでやるか」を判断する工事だと理解することが重要です。
大規模修繕工事は、費用も大きく、工事期間も長いため、「大変なイベント」「できれば避けたいもの」と捉えられがちです。
しかし本質的には、大規模修繕工事は突然の雨漏りや事故への不安、将来の修繕費が読めない不安、建物価値が下がっていく不安を減らすための工事です。
建物の現状を正しく把握し、計画的に修繕を行うことで、管理組合・オーナー様は安心して次の10年を迎えることができるようになります。
大規模修繕工事が必要な理由を理解すると、次に多くの管理組合・オーナー様が気になるのが、「具体的に、どこを、どのように直すのか」という点ではないでしょうか。
大規模修繕工事の内容は、建物の構造や劣化状況によって異なります。しかし実際には、多くのマンション・ビルで工事対象となる部位には共通点があります。
ここでは、見積書や提案書によく出てくる代表的な工事内容について、「なぜ必要なのか」「やらないとどうなるのか」という視点から解説します。これを理解しておくことで、工事の優先順位や見積内容の妥当性が判断しやすくなります。
外壁は、建物の中でも最も過酷な環境にさらされている部位です。紫外線、雨風、排気ガス、温度変化の影響を長年受け続けることで、塗膜の劣化やタイルの浮き・ひび割れが発生します。
外壁工事では主に、
を行います。
外壁塗装は単なる美観改善ではなく、雨水の侵入を防ぐ防水機能を回復させる工事です。また、タイルの浮きを放置すると剥落事故につながり、管理責任上も大きなリスクになります。
そのため外壁工事は、美観・防水性・安全性を同時に回復させる、非常に重要な工事と位置づけられます。
屋上やバルコニーは、雨水が直接溜まりやすく、建物の中でも特に防水性能が重要な部位です。防水層は経年劣化により、ひび割れ、膨れ、剥がれが発生し、徐々に本来の性能を失っていきます。
大規模修繕工事では、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水など、建物の構造や既存防水層に適した工法が採用されます。
防水工事を適切なタイミングで行わないと、雨水が建物内部に浸入し、
へと被害が拡大します。
その意味で、防水工事は建物全体を守る「最優先工事」と言っても過言ではありません。
マンションやビルには、
など、多くの鉄部・金属部が使用されています。
これらは塗膜が劣化すると錆が発生し、強度低下、部材の破断、見た目の悪化につながります。
大規模修繕工事では、錆の除去や下地処理を行ったうえで、防錆塗装を施します。ここで重要なのは、「塗る前の下地処理」です。
下地処理が不十分なまま塗装すると、数年で再び錆が発生し、結果的に再修繕が必要になります。鉄部塗装は目立ちにくい工事ですが、安全性と耐久性を支える重要な工事です。
共用部は、居住者や利用者が毎日使用し、建物全体の印象を左右する場所です。廊下、階段、エントランス、駐輪場などの劣化は、見た目以上に安全性にも影響します。
共用部工事では、床材の補修・張り替え、天井や壁の補修・塗装、照明器具の交換などが行われます。
共用部の修繕は、単なる美観改善ではなく、転倒事故の防止や避難経路の確保といった日常の安全確保に直結します。
大規模修繕工事では、建物本体だけでなく、
といった付帯部や設備の点検・修繕も行われます。
これらは普段あまり意識されませんが、不具合が発生すると生活や建物運営に直接影響します。
大規模修繕工事は、建物を「点」ではなく「全体」で見直す工事であるため、こうした細かな部分も含めて計画することが重要です。
ここまで見ると、「こんなに多くの工事をすべてやらなければならないのか」と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、劣化状況や予算に応じて、
を整理することが可能です。
重要なのは、建物の現状を正しく把握する、安全性に直結する工事を優先する、将来を見据えて計画するという視点です。
大規模修繕工事は、「全部やる工事」ではなく、「必要なことを、必要な範囲でやる工事」だと理解すると、判断がしやすくなります。
大規模修繕工事を検討するうえで、管理組合・オーナー様が最も強い関心を持つのが「結局、いくらかかるのか」という費用の問題です。
ただし、大規模修繕工事の費用は、「○○万円です」と一言で言い切れるものではありません。建物の規模、構造、劣化状況、工事内容によって、金額は大きく変わります。
ここでは、一般的な費用相場の目安、費用が決まる仕組み、見積金額に差が出る理由を整理し、「適正価格」を判断するための基準を解説します。
まず、多くの方が知りたい費用相場についてです。
マンションの大規模修繕工事では、1戸あたりおおよそ75万円〜125万円前後が、ひとつの目安とされるケースが多く見られます。
例えば、
| 50戸規模であれば | 3,500万円〜6,000万円前後 |
| 100戸規模であれば | 7,000万円〜1億円超 |
といった金額帯になることも珍しくありません。
ただし、この金額は「すべての工事をフルで行った場合」「外壁・防水・共用部を中心に実施した場合」の目安であり、工事範囲を絞ればこれより抑えられるケースもあります。
重要なのは、「相場=必ずかかる金額」ではないという点を理解することです。
ここでご紹介した金額は、あくまで一般的な目安です。
実際には、工事内容や仕様の考え方によって費用は大きく変わります。
同じ戸数・同じ築年数でも、見積金額に大きな差が出ることがあります。その理由は、費用が次のような要素の組み合わせで決まるためです。
まず大きな要因となるのが、建物の規模と形状です。階数が高い建物や、横に長い建物、複雑な形状の建物は、足場や仮設工事の費用が高くなる傾向があります。
次に影響するのが、劣化状況です。劣化が進行している場合、下地補修の数量が増えたり、補修工法が重くなったりすることで、工事費用は大きく膨らみます。
さらに、採用する材料のグレード、防水工法の種類、共用部の改修範囲といった仕様選定によっても、総額は変動します。
大規模修繕工事の費用内訳で、まず目に入るのが仮設工事です。仮設工事には、外部足場の設置・解体、飛散防止シート、養生などが含まれます。
足場費用は、建物全体を囲うため金額が大きくなりやすく、全体工事費の中でも大きな割合を占める項目です。
ここで注意したいのは、「足場はどの工事にも共通して必要になる」という点です。外壁工事、防水工事、鉄部塗装を別々に行うと、その都度足場が必要になり、結果的に総費用が高くなります。
次に大きな割合を占めるのが、外壁工事や防水工事といった建物の性能を左右する主要工事です。
外壁工事では、外壁塗装、タイル補修、シーリング工事などが含まれます。防水工事では、屋上防水、バルコニー防水、共用廊下防水などが対象になります。
これらの工事は、使用する材料や工法によって耐久性や金額が大きく変わるため、「安いか高いか」だけで判断するのは危険です。
短期的に安く抑えても、耐久性が低ければ、結果的に次の修繕が早まり、長期的なコストが高くなることもあります。
大規模修繕工事の中で、費用が最もブレやすいのが下地補修工事です。
下地補修とは、コンクリートのひび割れ補修、欠損部の補修、タイル浮きの補修など、建物の傷んだ部分を直す工事です。
この工事は、実際に足場を組んでからでないと正確な数量が分からないケースも多く、見積書では「想定数量」や「実数精算」といった形で計上されることがあります。
下地補修の考え方を理解していないと、「工事途中で追加費用が発生した」というトラブルにつながりやすいため、見積段階での説明内容が非常に重要です。
同じ建物でも、業者によって見積金額が大きく異なることがあります。その主な理由は、工事範囲の設定の違い、材料・仕様の違い、下地補修の考え方の違い、中間マージンの有無などです。
特に注意したいのは、「一式表記が多く、内訳が分かりにくい見積書」です。一見すると安く見えても、工事内容が十分に含まれていない場合、後から追加費用が発生するリスクがあります。
大規模修繕工事の費用は、安さではなく、内容と根拠で判断するという視点が欠かせません。
大規模修繕工事の費用相場を把握したとき、多くの管理組合・オーナー様が直面するのが、「修繕積立金が足りない」という現実です。
実際、長期修繕計画通りに積み立ててきたはずなのに足りない、物価や人件費の上昇で想定より工事費が高くなった、過去の修繕で一部工事を先送りしてきたといった理由から、積立金不足は決して珍しい問題ではありません。
重要なのは、「足りない=工事ができない」と短絡的に判断しないことです。
ここでは、修繕積立金が不足している場合に、現実的に取り得る選択肢と、その考え方を整理します。
修繕積立金が不足している場合、最初に行うべきなのは、工事内容の取捨選択と優先順位付けです。
大規模修繕工事は、「すべてを一度にやらなければならない工事」ではありません。
まず優先すべきなのは、
といった、建物の安全・耐久性に直結する工事です。
一方で、美観改善が主目的の工事や、まだ劣化が軽微な部位については、次回修繕へ回す判断も可能です。
「できるか・できないか」ではなく、「今やるべき工事は何か」を整理することが、最初の一歩になります。
次に検討すべきなのが、仕様の見直し(VE:バリューエンジニアリング)です。
VEとは、建物の性能や安全性を落とさずに、材料や工法を見直すことでコストを調整する考え方です。
例えば、過剰に高耐久な材料を見直す、部位ごとに適切な材料グレードを選ぶ、工法を建物条件に合ったものへ変更するといった方法があります。
ここで注意したいのは、「安い材料に変える=コスト削減」ではないという点です。耐久性を無視した仕様変更は、次回修繕を早め、結果的に長期コストを増やす原因になります。
VEは、専門的な知見がないと逆効果になる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
修繕積立金が不足している場合、一時金の徴収や月額積立金の増額を検討するケースもあります。ただし、これらは居住者・区分所有者への負担が大きく、合意形成が難しい選択肢でもあります。
そのため、なぜ不足しているのか、この工事を行わないと何が起こるのか、将来どのようなリスクがあるのかを丁寧に説明することが不可欠です。
一時金や増額は、「最後の手段」ではなく、建物を守るための選択肢のひとつとして、冷静に検討する必要があります。
修繕積立金だけで賄えない場合、借入を活用するという選択肢も現実的です。
現在は、管理組合向けの修繕ローンや共用部分を対象とした融資制度などが整備されており、修繕積立金と組み合わせて工事を行うケースも増えています。
借入を活用することで、工事を先延ばしにせず実施できる、一時金の負担を抑えられるといったメリットがあります。
一方で、返済計画や将来の修繕への影響を十分に考慮しないと、次回修繕で再び資金不足に陥るリスクもあります。「借りられるか」ではなく「返せるか」という視点で検討することが重要です。
修繕積立金が足りない場合、「今回は工事を延期しよう」という判断が出ることもあります。
しかし、工事延期は劣化の進行、下地補修の増加、将来の修繕費増大を招きやすく、結果的に最もコストが高くなる選択になることがあります。
特に、防水工事や外壁補修を先送りした結果、雨漏りや構造部劣化が進行してしまうと、修繕規模が一段階大きくなります。
延期は「選択肢のひとつ」ではありますが、最終手段として慎重に判断すべき選択であることを理解しておく必要があります。
修繕積立金が不足している状況では、管理組合だけで判断を進めるのは非常に難しくなります。
この段階こそ、建物診断を踏まえた優先順位整理、適切なVE提案、現実的な資金計画の立案といった、専門家の関与が不可欠です。
「何を削ってよいか」「削ってはいけないか」「今やるべき工事は何か」を第三者の視点で整理することで、後悔のない判断がしやすくなります。
大規模修繕工事は、「工事が始まってからが本番」と思われがちですが、実際には工事が始まる前に8割が決まると言っても過言ではありません。
多くの失敗事例は、
ことが原因で起きています。
ここでは、管理組合・オーナー様が「今、自分たちはどの段階にいるのか」を把握できるよう、大規模修繕工事の全体像と、失敗しない進め方を時系列で整理します。
大規模修繕工事は、実際の着工から逆算して考えることが重要です。一般的な目安としては、工事開始の1年半〜2年前から準備を始めるのが理想的とされています。
この期間に、
を段階的に進めていくことで、無理のない計画が立てられます。「まだ早い」と感じる時期こそ、実は最も冷静な判断ができるタイミングです。
最初に行うべきは、進める体制を整えることです。理事会だけで大規模修繕工事を進めるのは、時間的にも精神的にも大きな負担になります。
そのため、多くのマンションでは、理事会とは別に大規模修繕に特化した「修繕委員会」を設置します。
修繕委員会の役割は、業者との打ち合わせ、資料の整理、検討内容の整理を行い、理事会・総会に判断材料を提供することです。「決定権」を持つのではなく、判断を助けるための組織と考えると、運営しやすくなります。
次に行うのが、専門業者による建物診断です。ここで重要なのは、「見積もりのための調査」ではなく、「判断材料を得るための調査」という位置づけで行うことです。
建物診断では、外壁のひび割れやタイルの浮き、防水層の劣化状況、鉄部や共用部の傷みなどを客観的に確認します。
この段階で、「今すぐ必要な工事」と「次回でも間に合う工事」を仕分けできるかどうかが、その後の成否を大きく左右します。
診断結果をもとに、次に行うのが工事の基本方針決定です。
ここでは、今回の大規模修繕で何を目的とするのか、どこまでを工事範囲とするのか、概算でいくらまで使えるのかを整理します。
この段階で、修繕積立金の残高や不足する場合の対策(前章で解説した内容)もあわせて検討しておくことで、後から大きな方針転換をせずに済みます。
方針が固まったら、いよいよ業者選定に入ります。この段階で重要なのは、複数社から提案を受けること、そして金額ではなく「考え方」と「説明力」を比較することです。
業者選定後は、管理組合の総会で工事内容、費用、工期について説明し、決議を取ります。ここで合意形成が不十分だと、工事開始後にトラブルが起きやすくなります。
工事開始前には、居住者・利用者向けの説明会を行います。説明すべきポイントは、工事期間、生活への影響(音・臭い・ベランダ制限など)、問い合わせ窓口です。
この説明が丁寧に行われているかどうかで、工事中のクレームの多さが大きく変わります。「工事の説明」ではなく、「生活への影響の説明」という視点が非常に重要です。
工事が始まると、「もう業者に任せておけばいい」と思いがちですが、ここも重要な工程です。
工事期間中は、定例打ち合わせで進捗を確認したり、想定外の事態への対応方針を共有したり、居住者からの声を把握するといった関与が必要になります。
すべてを監督する必要はありませんが、「任せきり」にしない姿勢が、工事品質と安心感を支えます。
工事完了後は、仕上がり確認、不具合の有無確認、保証内容の確認を必ず行います。
ここを曖昧にすると、「終わったはずなのに不安が残る」という状態になってしまいます。また、工事後の定期点検やアフターフォローについても、この段階で確認しておくことが重要です。
大規模修繕工事を進めるうえで、意外と見落とされがちなのが 「発注方式の選択」です。
多くの管理組合・オーナー様は、「どの業者に頼むか」に意識が向きがちですが、実はその前に、「どの方式で工事を発注するか」を決めておく必要があります。
発注方式の選択を誤ると、
といった問題が起きやすくなります。
ここでは、大規模修繕工事で代表的な2つの発注方式と、それぞれの特徴・向いているケースを整理します。
大規模修繕工事の発注方式は、主に次の2つに分かれます。
どちらが正解ということはなく、建物規模・管理体制・考え方によって適・不適が異なります。
責任施工方式とは、1社の施工会社に調査・提案・設計・工事までを一括して任せる方式です。
責任施工方式のメリットは、窓口が一本化される、意思決定がシンプル、設計監理費用がかからず総額を抑えやすいという点です。
特に、小〜中規模マンションや、理事会や委員会の負担を減らしたい場合には向いています。
一方で注意すべき点は、第三者チェックが入りにくい、工事内容の妥当性を自分たちで判断しにくいという点です。
そのため、施工会社の説明力・誠実さ・実績が非常に重要になります。「言われるがまま任せる」のではなく、なぜこの工事が必要なのかを分かりやすく説明してくれる業者であることが前提条件です。
設計監理方式とは、設計・監理(チェック)を行う専門家(設計事務所・コンサルタント)と、実際に工事を行う施工会社を分けて契約する方式です。
設計監理方式の最大のメリットは、第三者が管理組合側の立場で工事をチェックする、仕様や数量の透明性が高い、手抜きや不要工事を抑制しやすいという点です。
特に、中〜大規模マンションや、専門知識を持つ理事が少ない場合には安心感があります。
一方で、設計監理費用が別途発生する、意思決定に時間がかかる、コンサルタントと施工会社の相性によって進行が左右されるといった側面もあります。
また、「第三者が入れば絶対に安心」というわけではない点も理解しておく必要があります。
発注方式を選ぶ際は、「方式そのものの良し悪し」ではなく、自分たちの管理体制に合っているかで判断することが重要です。
例えば、
・理事会の負担をできるだけ減らしたい
・信頼できる施工会社が既にいる
→ 責任施工方式
・工事内容を客観的にチェックしたい
・初めての大規模修繕で不安が大きい
→ 設計監理方式
というように、組合の状況に応じて選ぶという考え方が現実的です。
どの発注方式を選んだとしても、共通して重要なのは次の点です。
方式に頼りきるのではなく、「理解したうえで選ぶ姿勢」が、最終的な満足度を大きく左右します。
大規模修繕工事の成否を最終的に左右するのは、「どの施工会社を選ぶか」です。
どれだけ計画を練っても、どれだけ丁寧に合意形成をしても、実際に工事を行う施工会社の技術力・現場管理力が低ければ、工事は期待通りの結果になりません。
大規模修繕工事で多い失敗の多くは、「工事内容」ではなく、「業者選びの段階」で起きています。ここでは、管理組合・オーナー様が判断を誤らないために必ず確認すべきポイントを整理します。
施工会社選びで最も多い失敗が、見積金額の安さだけで決めてしまうことです。
大規模修繕工事の見積金額は、工事範囲、下地補修の考え方、材料グレード、現場管理体制によって大きく変わります。
極端に安い見積もりの場合、
といったケースも少なくありません。
重要なのは、「なぜこの金額になるのか」を論理的に説明できるかどうかです。
施工会社選びでは、「建設会社かどうか」よりも、「大規模修繕工事の専門実績があるか」を重視すべきです。
新築工事が得意な会社と、既存建物を扱う修繕工事が得意な会社では、考え方も現場対応も大きく異なります。
確認すべきポイントは、
といった点です。
施工会社の名前や実績だけでなく、実際に現場を担当する現場代理人(現場監督)の質は非常に重要です。
大規模修繕工事では、居住者対応、工事進行管理、想定外トラブルへの対応など、現場判断が求められる場面が多くあります。
確認したいポイントは、説明が分かりやすいか、質問に対して誠実に答えるか、過去のトラブル事例と対応方法を説明できるかです。
「会社が良さそう」ではなく、「この人に現場を任せられるか」という視点で見ることが重要です。
見積書を見る際は、合計金額よりも中身の書き方に注目します。
特に注意すべきなのは、
という点です。内容が曖昧な見積書は、工事中の追加費用や認識ズレの原因になりやすくなります。
大規模修繕工事は、工事が終わってからが本当の付き合いの始まりでもあります。
そのため、会社の経営が安定しているか、保証期間や内容が明確か、定期点検やアフター対応の体制があるかを必ず確認しましょう。
工事期間中に倒産するリスクや、工事後に連絡が取れなくなる業者は、管理組合にとって大きなリスクになります。
最終的に最も重要なのは、施工会社の説明力です。
なぜこの工事が必要なのか、なぜ今の時期なのか、なぜこの仕様なのか。これらを、専門用語に頼らず、管理組合・居住者の目線で説明できるかどうか。
説明が丁寧な業者は、工事も丁寧である可能性が高い傾向があります。
大規模修繕工事は、しっかり準備をすれば成功率の高い工事である一方、判断を誤ると取り返しがつかない失敗につながる工事でもあります。
実際に現場では、「工事が終わってから後悔している」「もっと早く知っていれば防げた」という声を数多く耳にします。
ここでは、実際の大規模修繕工事で特に多い失敗事例と、それを未然に防ぐための考え方を整理します。
よくあるのが、「築12年だからそろそろ大規模修繕」「前回が12年前だから今回も」と、築年数だけで工事時期を決めてしまうケースです。
この判断の問題点は、劣化が進んでいない部分まで工事してしまう、逆に劣化が進んでいる箇所を見落とすという、無駄とリスクの両方を抱える点にあります。
✅ 回避策
「何年経ったか」ではなく「今どうなっているか」を基準に判断することが重要です。
「他社より〇千万円安かったから」という理由で業者を決めた結果、工事中に追加費用が発生、下地処理が不十分、数年で不具合が再発といったトラブルにつながるケースは非常に多くあります。
安さの裏には、工事範囲の省略、数量の過少見積、品質低下が隠れていることも少なくありません。
✅ 回避策
「安い理由が明確でない見積もり」は危険信号です。
「お金が足りないから今回は見送ろう」という判断が、結果的に最もコストの高い選択になるケースもあります。
防水や外壁補修を先送りした結果、雨漏りが発生、下地や構造部まで劣化、次回工事が大規模化してしまう例は珍しくありません。
✅ 回避策
「やらない」ではなく「どうやるか」を考えることが重要です。
「専門的なことは分からないから」と、すべてを業者任せにしてしまうと、工事内容が把握できない、判断の軸がなくなる、トラブル時に対応できないという状況に陥りがちです。
これは、責任施工方式・設計監理方式のどちらでも起こり得ます。
✅ 回避策
「理解したうえで任せる」姿勢が、失敗を防ぐ最大のポイントです。
工事内容自体は問題なくても、説明不足、情報共有不足が原因で、居住者トラブルに発展するケースも多くあります。
騒音・臭い・ベランダ制限は、事前に理解してもらえるかどうかで受け止め方が大きく変わります。
✅ 回避策
工事の成功=技術+コミュニケーション であることを忘れてはいけません。
工事が終わった安心感から、完了検査を十分に行わなかった、保証内容を確認しなかった結果、不具合が出た際に対応が遅れるケースもあります。
✅ 回避策
工事は「終わってから」が本番という意識が大切です。
大規模修繕工事は、費用も規模も大きく、管理組合・オーナー様にとって簡単にやり直せる工事ではありません。だからこそ重要なのは、正しい判断を、正しい順番で行うことです。
失敗を防ぐためには、築年数だけで工事時期を決めず、まずは建物の劣化状況を正しく把握することが欠かせません。そのうえで、工事内容の優先順位を整理し、金額の安さではなく「説明力・実績・考え方」を基準に業者を選ぶことが重要です。
また、大規模修繕工事は工事が始まってからではなく、準備段階で結果の大半が決まります。業者任せにせず、「なぜこの工事が必要なのか」を理解したうえで進めることが、後悔しないための最大のポイントです。
もし今、本当に今やるべきか迷っている、費用や修繕積立金に不安がある、業者の提案が正しいのか判断できないと感じているのであれば、まずは建物の現状を知ることから始めてみてください。
それが、大規模修繕工事で失敗しないための、最も確実で無理のない第一歩です。
株式会社幸成(こうせい)は、西東京市を拠点に外壁塗装・防水工事・大規模修繕工事を行う直営施工店です。
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